Unity 2023.1 TECH ストリームが公開され、ダウンロード可能になりましたことをお知らせいたします。
HD レンダーパイプライン(HDRP)とユニバーサルレンダーパイプライン(URP)の両方の機能とレンダリング品質の改善、プラットフォーム向けのグラフィック性能の向上、マルチプレイヤーソリューション向けの接続タイプの追加などが行われました。
TECH ストリームのリリースを使えば早期に最新機能にアクセスして実際に利用することができ、またフィードバックを共有していただくことで、Unity を皆さんの創造性を向上させるためのより優れたツールにしていくことができます。
この記事では、今回のリリースのハイライトをご紹介します。詳細は公式リリースノートでいつでも参照していただけます。
Unity 2023.1 では、レンダリング品質、および HDRP と URP の両機能の共存を強化する追加機能を引き続きご提供いたします(当社のビジョンの詳細は、スケーラブルなレンダリングに関する Games Focus シリーズのブログ記事をご参照ください)。
単一のポストプロセスボリュームを使って数回クリックするだけで、画面に表示されているすべてのハイライト(直接、間接、エミッシブサーフェス、鏡面ハイライト)から生成されたレンズフレアを追加できるようになりました。
この機能は HDRP と URP の両方に対応しており、同時に使用でき、SRP レンズフレアを補完します。SRP レンズフレアは、光のレンズフレアに対して美術面でより高度な制御を提供するものです。
私たちは、一貫していてかつすぐにご使用いただける体験をご提供することで、アーティストが HDRP を使って PC やコンソールで高い忠実度を持つ環境を実現できるようにしたいと考えています。Unity 2022.2 では、不足していた部分の 1 つである Unity では初となるネイティブのウォーターシステムを導入いたしました。Unity 2023.1 では、ワールドとゲームプレイがより統合されたものとするために、より詳細な水のオーサリングを可能にすることに重点を置いています。
Water Excluder を使用すると、ボートや洞窟の内部から水を動的に除去できます。また、Water Deformer を使用すると、水を局所的に変形させて、移動中の船の周囲の波、渦、または水の変形を表現することができます。
Foam Generator を使用すると、ボートが通った跡や外洋の岩の周りに見られる、白く泡立った水をシミュレーションできます。また、Current マップでは、流れに沿った水面の波と、物体の漂流の表現を可能にする水クエリ API を両方管理することによって、局所的な水の流れを作り出します。優れた制御機能を活用して、カメラが水面を横切るときのウォーターラインをカスタマイズすることもできます。
すぐに試していただけるよう、Package Manager から HDRP パッケージで利用できる複数のサンプルと、GitHub で利用できるさまざまなデモシーンをご用意しました。
HDRP での水のレンダリングの詳細については、GDC 2023 の「An overview of the new HDRP Water System」(日本語吹き替え版:「【Unity】HDRPで作る、進化した水表現」)をご覧ください。
透明オブジェクトと光が透過するオブジェクトの視覚的な忠実度を向上させるために、透明オブジェクトの厚さを計算するオプションのパスを追加できるようになりました。これは、光が通る不透明なマテリアルの厚さを考慮に入れており、不均質なオブジェクトや、複数のオブジェクトを次々にレンダリングする場合に特に重要です。
Unity 2023.1 では、『Enemies』や『Lion』のデモに見られるような、デジタルヒューマンやデジタルクリーチャーのレンダリングに使われるテクノロジーの最後のピースが導入されます。HDRP の高品質なラインレンダラーがあれば、高度なボクセル化を使用してラインをレンダリングして、髪の毛や毛皮をレンダリングするときによく見られる透明度の順序付けやエイリアシングの問題を解決できます。
高忠実度の肌のレンダリングにも改良が加えられ、高解像度パスのサブサーフェススキャタリングパスのパフォーマンスを最適化し、また、サブサーフェススキャタリングを使用するマテリアルの拡散プロファイルにデュアルローブと拡散のパワーを追加しました。皮膚をシミュレーションする場合、表皮をおおう皮脂層を考慮に入れて 2 つの鏡面反射光ローブを使用するのが一般的です。
すべての動作を確認するために、Unity Asset Store で『Enemies』のプロジェクトをダウンロードできます。
DirectX 12 とレイトレーシングの安定性およびパフォーマンスが向上し、エンジンの既存の機能セットとコンソールサポートとの互換性も向上しました。これにより、レイトレーシング API と、レイトレーシングで表現された影、反射、AO、グローバルイルミネーション、パストレーシング、再帰的レンダリングなど、HDRP のレイトレーシングによるエフェクトが正式にプレビューから製品版に移行します。
また、Visual Effect Graph のレイトレーシングサポートも追加されました。これにより、HDRP のレイトレーシングによるエフェクトと互換性のある複雑なパーティクルエフェクトのオーサリングが可能になります。また、大規模ワールドでレイトレーシングを使用するための地形ハイトマップのサポートも追加されました。レイトレーシング API に追加されたインスタンシングサポートにより、高周波の繰り返しメッシュとディテールを含む、大規模で高密度のシーンを効率的にレイトレーシングできるようになりました。
Unity Hub に新しくレイトレーシングの品質設定が提供されるよう更新された HDRP サンプルシーンテンプレートをインストールして、今すぐレイトレーシングを使った実験を始めましょう。
このリリースでは、DXR1.1 対応プラットフォームに対するインラインレイトレーシングのサポートも導入されています。バインドされたレイトレーシングアクセラレーション構造を走査して交差テストを実行するために、コンピュートシェーダー内からハードウェアアクセラレーションによるレイのクエリを発行できるようになりました。
レイトレーシングがプレビュー版から製品版に移行したことを記念して、NVIDIA が Unity 2023.1 ベータ版のスポンサーになり、ベータ版テストの参加者に NVIDIA GeForce RTX™ 3070 グラフィックスカードをプレゼントするキャンペーンを行いました。
GeForce RTX™ RTX 3070 グラフィックスカードは、NVIDIA の第 2 世代 RTX アーキテクチャである Ampere を搭載しています。専用の第 2 世代 RT コアと第 3 世代 Tensor コア、ストリーミングマルチプロセッサー、および高速メモリで構成されており、要求の厳しいゲームのプレイに必要なパワーを提供します。
賞品の当選者には、新しいグラフィックスカードのお受け取り方法について、直接ご連絡いたします。
ライトプローブで照らされたオブジェクトの場合、プローブボリュームを使用することで、ライトプローブの配置をより早く整え、イテレーションを行うことができます。ライトプローブで照らされたオブジェクトのビジュアルの品質はより高くなり、またその品質が HDRP およびパーティクルのボリューメトリックフォグに影響を与えます。一部のシナリオでは、プローブボリュームを使用して、たとえば環境内にある静的オブジェクトを間接的に照らすこともできます。ライトリークを減らすツールと組み合わせると、必要なライトマップを削減でき、それに伴ってライトマップ UV をオーサリングする必要性も下がるため、ベイク時間が短縮します。
ベイクセットを使用すると、HDRP でさまざまなライトプローブで照らされたライティングシナリオをセットアップし、ブレンドすることができます。実行時、CPU からプローブデータをストリーミングすることで、GPU メモリのフットプリントが減ります。
Unity 2023.1 のリリースでは、アダプティブプローブボリュームの中心となる機能とユーザー体験が改善され、正式にプレビュー版から製品版に移行しました。
また、URP でのアダプティブプローブボリュームのサポートも限定的ながら実装されました。今回のイテレーションでは、リフレクションプローブのライティングシナリオのブレンディング、あるいはライティングの正規化はサポートされませんので、ご注意ください。特にローエンドのプラットフォームで実行する場合について、まだパフォーマンスが最適化されていない可能性があります。
詳細は、GDC 2023 の「Efficient and impactful lighting with Adaptive Probe Volumes」や、Unite 2022 のライティングに関するチュートリアル「Lighting tutorial: 4 techniques to light environments in Unity」をご参照ください。
Baked GI では、オンデマンドのベイクに新しい LightBaker v1.0 アーキテクチャを使用するようになったことで、予測可能性が高まり、より安定したライトベイク体験を提供できるようになりました。オンデマンドモードで GPU バックエンドを使用してベイクする場合、Lighting ウィンドウの Baking Profile を使用して、パフォーマンスと GPU メモリ使用量のトレードオフを選択できます。
Visual Effect Graph に新しく追加されたこの出力を使用すると、HDRP のボリューメトリックフォグにパーティクルを注入して、雲、煙、霧、火などのエフェクトを生成したり、より動的かつプロシージャルなボリューメトリックフォグを作ることができます。さまざまな Blend モード(加算、乗算、最小-最大)を使って、既存のフォグにパーティクルを乗せたり、消したり、組み合わせたりすることができます。たとえば、煙を使ってフォグを濃くしたり、風の流れやもやを表現したり、水中の流れを作ったりすることができます。
こちらの Games Focus の記事で共有された展望どおり、プラットフォームのサポートと技術の統合は、Unity 2023.1 においても進歩し続けています。
私たちは、Windows、Android、iOS、Meta Quest、Magic Leap 2、Xbox®、PlayStation®5、Playstation®VR2 など、主要なプラットフォームに対するパフォーマンスと機能の改善を続けています。
Unity は、Surface Pro 9 や Lenovo ThinkPad X13 などの ARM64 プロセッサーを使用するデバイスで、ネイティブパフォーマンスを実現しながら、Arm ベースの Windows デバイス用のプロジェクトの構築をサポートするようになりました。これにより、さまざまなデバイスで高いパフォーマンスを持つ没入型の体験を作成する新たな可能性が開かれます。
Android デバイスでのモバイル開発向けとしては、Unity 2023.1 TECH ストリームで使える 2 つの重要な機能、Android GameActivity と Android Project Configuration Manager があります。
Android GameActivity によって、アプリケーションの重要な部分をより制御できるようになり、また中核となるコードの自由度や柔軟性も向上します。ドキュメントについては、こちらを参照してください。
プラグインを使用している場合、またはプラグイン開発者である場合は、Project Configuration Manager を使用して Android Gradle 設定(マニフェスト、設定、ビルド)を構成するための、より柔軟で堅牢な方法が利用できるようになりました。Unity マニュアルで Gradle プロジェクトファイルを変更する方法を参照してください。
Adaptive Performance 5.0 には、実行時に Adaptive Performance のライフサイクルを制御する強化機能が含まれています。私たちはさらに、このパッケージをほとんどの Android デバイスに拡張するための Android プロバイダーの準備を進めています。
Unity 2023.1.0a22 では、HDR ディスプレイのサポートがデスクトップおよびコンソールプラットフォームの URP まで拡張されました。これに続いて Unity 2023.2 では、モバイルおよび XR プラットフォームのサポートが予定されています。HDR ディスプレイは、より高いピーク輝度とより広い色域で画像を再現でき、これにより、ハイライトとシャドウの彩度とコントラストの改善も実現できます。その結果、シーン全体での輝度の変化がもっとリアルになり、表面のディテールや奥行き知覚が向上します。
Windows プラットフォームにおける DirectX 12 のパフォーマンスをさらに向上させるために、Unity 2023.1 では Split Graphics Jobs と呼ばれる新しいグラフィックス関連のジョブのためのスレッドモードが導入されています。このモードの目的は、メインのグラフィックスジョブスレッドとネイティブのグラフィックスジョブスレッド間の不要なフレームの開始または終了の同期を削減し、パフォーマンスを大幅に向上させることです。Unity 社内での試験では、Split Graphics Jobs を使用して DirectX12 をターゲットにすると、CPU レンダーセットアップのパフォーマンスが DirectX11 よりも大幅に向上することが観察されました。詳細は、公式フォーラムの投稿を参照してください。
XR Interaction Toolkit v2.3.0 には、インタラクショングループ、Poke および Gaze インタラクター、ハンドインタラクションの統合とサンプル、デバイスシミュレーターの使いやすさの向上など、いくつかの新機能が含まれています。また、新しい Interaction Affordance System を使用すると、高パフォーマンスのインタラクションインジケーター(ビジュアル、オーディオ、ハプティクスなど)を構築できます。XRI 2.3 は Package Manager からインストールできます。詳細は、こちらのドキュメントをご参照ください。
Unity 2022 LTS と同時にリリースされた Netcode for Entities は大きなマイルストーンとなりました。今後もエディターのマルチプレイヤーソリューションに機能を追加していく予定です。また、Netcode for GameObjects や エディター側の機能など、すべてのマルチプレイヤーソリューションの Unity Gaming Services への統合をさらに進め、Games Focus のマルチプレイヤー関連の記事で示した概要の通り、単一のマルチプレイヤーソリューションを提供することにも取り組んでいます。
実験的リリース Unity Transport Protocol(UTP)は、ネットワークおよび接続されたプラットフォーム・デバイス間でのゲームデータの転送を処理する、下位レベルのネットワークインフラストラクチャです。Unity 2023.1 では、UTP はウェブ接続と TCP 接続の両方をサポートし、ネットコードソリューションなど、UTP に依存するテクノロジーの機能を向上させています。
実験的リリース Multiplayer Play Mode(MPPM)は、マルチプレイヤーゲームの開発サイクルに重点を置きながら、シングルプレイヤーのようなユーザー体験を提供することを目的とした、マルチプレイヤーツールセットのワークフロー改善機能です。MPPM を利用すると、1 つのゲーム体験に接続している複数のプレイヤーを、1 台のマシンの上で同時にエミュレーションできます。Netcode for GameObjects などの最近リリースされた機能をサポートしているため、ハードウェアへの投資をわずかに抑えながらマルチプレイヤー開発を効率的に行うことができます。
Games Focus のキックオフとなったブログ記事で簡単にご説明しましたが、私たちは中核機能の安定化に取り組んでいます。つまり、目には見えないコンパイルプロセスを含め、さまざまな方法で C# サポートを更新し続けるということです。
以前のリリースでは、IL2CPP の実装にあたり、メソッド名のみが提供されていたために、マネージドスタックトレースが参照しているコードの特定の部分を追跡することが困難なことがありました。Unity 2023.1 では、開発者がデバッグシンボル処理の追加を有効にできるようになりました。これにより、C# ソースコードの行番号情報が表示されて、ゲームプロジェクトのコードベース内の特定の領域を追跡するのがはるかに簡単になります。この追加情報を有効にして表示する方法の詳細は、こちらのドキュメントをご参照ください。
以前お伝えした通り、kエディターに新しい機能を導入し、プロジェクトの作成をシームレスにすることに継続的に取り組んでいます。
アイテムやワークフローを右クリックしたときにポップアップするコンテキストメニューを改善し、標準化しています。改善には、より一貫したインタラクション、並べ替えの最適化、オプションの検索フィールドが含まれます。
Terrain Tools パッケージは、Unity シーンオーサリングワークフローにおけるより一貫性があり、予測可能な体験を実現するために、新しい Overlays ツールバーフレームワークに移行されました。
Unity 2023.1 TECH ストリームの詳細について、機能の網羅的なリストについては Unity 2023.1 リリースノートを、ドキュメントは Unity マニュアルをご参照ください。ご利用になる前に、TECH ストリームの各リリースは、次のリリースまで毎週のアップデートによりサポートされますが、新機能の長期的なサポートは保証されないことをご理解ください。また、新しいバージョンにアップグレードする前に、必ず作業のバックアップを取ることを忘れないでください。Unity の提供しているアップグレードガイドもご参照ください。本番環境のプロジェクトでは、安定性とサポートを向上させるために Unity LTS を使用することをお勧めします。
各 TECH ストリームでは、新機能に早期アクセスし、フィードバックを通じて将来の技術開発に参加する機会が提供されます。皆さんご自身と皆さんのプロジェクトを最大限サポートできるよう、ご意見、ご感想、ご要望をお伺いしたいと考えています。フォーラムで Unity の現状についてのご意見をお伝えいただく、または Unity プラットフォームのロードマップより、製品チームに直接フィードバックをお伝えくださいますよう、お願いいたします。