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『Book of the Dead』― コンセプトアート

2018年6月1日 カテゴリ: Industry | 7 分 で読めます
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このブログのシリーズでは、私たちのデモンストレーション『Book of the Dead』の制作について、様々な角度から見ていきたいと思います。先週、Unity の Demo チーム を紹介する記事を公開しましたが、今回は Georgi Simeonov に、私たちが公開したティザー動画のコンセプトアートの制作について話を聞きたいと思います。『Book of the Dead』にはまだ語られていない長大な物語があり、そして現在も制作が続いているプロジェクトですので、聞き出し過ぎて皆さんの興を削がないように気をつけたいと思います...

「木人」ー 「狂人」の一種

私たちはこのキャラクターを「狂人(the Screwies)」と呼んでいます。彼ら彼女らは 2 つの世界のはざまに閉じ込められた人々なのです。

「狂人」の初期デザイン案

様々な思索、着想の種、アイデアスレッド

これらのキャラクターには確かに人間だとわかるのだけども、一方でどこか壊れてしまっていることを伝える視覚的なサインを抱えさせる必要がありました。ホラーとか腐乱死体というイメージを抱かせることなく、しかしエーテル質な(幽霊のような)見た目になったり、魔法でできた物のようになってもいけないというので、非常に苦心してデザインしました。

  • 死体のような生物のようなもの
    • 初期のデザインには樹皮の質感を取り入れました。樹皮は人間の形態を大きく見せて、そのシルエットを他の何者かに変化させたいときに非常に便利なので、よく使われるマテリアルです。
      そのようなデザインは最終的に様々な動物を模したものに落ち着きましたが、同時にファンタジーやホラーに登場する怪物に非常に近いものになってしまったのです。
  • 泥・木の枝・石
    • もう少し森につながりがあるデザインに変えるために試行を重ね、「狂人」たちを森にあるものを模した姿を持たせてみました。木の枝だったり、樹皮や泥、あるいは樹脂だったり。さらに私は、「狂人」たちが記憶の中の形、おそらくは消えゆく記憶に結びついた姿形を取ろうとしているというアイデアをちょっと試してみたのです。
    • 何か要素を加えたり、ベースとなる人間の姿を拡大しようという場合は、往々にしてデザインがどこかの部族の格好のようになったり、フィクションで描かれる原始時代の文化を連想させるものになりがちです。
  • 引き算・破壊 ー かつてそうであった様をわずかだけ残す
    • もっと飾りを捨てて、かつて人間だったもの、あるいは単にそこにあるだけの魂や炎のような造形にしなければなりませんでした。そこで私は、目の前にあったシルエットから何かを取り除いたり、シルエットを壊してみたり、様々な方法で実験を重ねました。
  • どこか記憶と違う姿
    • 自然のものであるが、どこか抽象的で、彫刻のようでもあり、満たされることがない琥珀のコアを持たせました。
「狂人」の色彩/マテリアルの考察

灰を薄くかぶせてみたり、焦げた木や、ロウや透明感のある樹脂のバリエーションを試しながら「狂人」の最初のデザイン案の色彩についてしばし考察したところで、デザインによってカバーしたいと思っていたキーポイントにある程度到達することができました。

「狂人」のボツデザイン案

「狂人」のデザイン案のうち 3 つはデザインそのものは素晴らしいものでしたが、ストーリーにマッチしないのでボツになりました。

  • A -このデザイン案は暗黒の世界からやってきた悪魔の手先のように見えたのでボツにしました。
  • B -積み重ねた石と編んだ草のデザインの狂人ですが、これはトロルやエルフなどのおとぎ話の生物の色が濃すぎます。
  • C -このロウソクのような人型は、私たちの最終デザインの中にも様々な形で活かされています。
「狂人」の最終デザインを含むデザイン案

収束

検討の価値があると判断したアイデアは、外殻と空っぽの中身を相互作用させるというものでした。シルエットの変形の多くは、木の幹の色が暗い部分のマテリアルをつなぎ合わせたところに、新鮮な黄金色の樹脂で外殻の空洞を満たすという手法によって出来上がっています。

「狂人」の質感の参考にされたテクスチャ、ディティール、浸食のパターン

シルエットでデザイン的な表現ができる範囲がひどく制限されていたので、テクスチャと興味深い浸食のパターンに頼ることになりました。私たちは黒く焦げた樹皮をベースに、柔らかい粘土に指で付けた溝を思わせる痕跡のある樹脂で外殻を埋めるという手法を取りました。

「狂人」のバリアント
最初に出会う「狂人」の最終デザイン

探索者、すなわちプレイヤーが最初に見る「狂人」の最終デザインは最も魅力的だった浸食のパターンを組み合わせて作り上げられました。

「狂人」と出会う場所のサムネイル

上のスケッチは、主人公(とプレイヤー)が最初に「狂人」と遭遇する場所の初期のサムネイル案です。

Karen(主人公)

主人公 Karen の医療/装飾用ブレスレット

このブレスレットはティザー動画の中で Karen のキャラクターを表す唯一のビジュアルデザインとなっています。そしてこのブレスレットの存在と合わせて、劇中の会話が彼女の人格や背景をうかがい知る第一の方法となっています。ブレスレットのデザインはこの手の医療ブレスレットに共通する要素を元に、純粋に装飾的なデザインと認識されるように再解釈や意匠の隠蔽が加えられています。

巨大な彫像 ―「司教」

ティザー動画では「司教」はちらりと姿を見せる程度の出番しかありませんでしたが、『Book of the Dead』の世界において重要なキャラクターであり、変化しつづける物語の中で重要な役割を担います。

「司教」の初期デザイン案

「司教」のデザインでは幸いなことに早い段階でこれだと思えるものが浮かんできたので、デザイン出しの回数は他に比べてはるかに少なくて済みました。「石棺」と「舟」はギリシャ神話のカロンと古代エジプトの石棺の両方から着想を得ました。カロンはスティクス川を渡って冥界に行く者を導く付添人、エジプトの石棺は神格化された人物を思い起こさせる要素を伝え、また旅の乗り物としての役割も果たします。「司教」が私たちと遭遇するときの彼のポーズとアングルを様々に変えて検討し、空に浮かぶ巨大な気球のようにしてみたり、風景の中でひときわ目立つ物体として置いてみたりしました。

「司教」のサムネイル、概略図、場所/位置のアイデア
「司教」の最終デザイン/ポートレート

「司教」の胸部と彼の顔のパーツにある模様は鍵穴のような装飾品で形作られており、彼の鍵を模したイヤリングの錠前にも精密な作りこみが見られます。「舟」の内装は壊れた古いタイプライターと、きつく積まれた活字のハンマーから着想したものです。私たちはこれを「司教」の身体の支柱および記録を残すための小さな刻板として登場させました。

「巣箱」

「巣箱」の場所とプロップ

「巣箱」は樹皮を細く裂いたものを泥や樹脂で固めたり粗く編み上げたりして作られた、ものすごく巨大なハタオリドリの巣あるいは折り重なったハチの巣というイメージを元にしています。たくさんの車や街灯のような小さな構造物は、構造物に私たちの記憶している、あるいは理解している現実の断片をそれとなく擬態させるという方法をカーゴ・カルトから着想して置かれたものです。

『Book of the Dead』世界全体の初期レイアウト案

この画像は制作初期にストーリーの進行に従って地図上の特定の位置に行きつくような組み立てを試みたときに作ったものです。シアンの線は環境内に設定された順路の分岐パターンを示しています。

「巣箱」のモジュール、プロップ、構造アイデア

さまざまなプロップが記憶の物理的な表現を伴って現れます。「狂人」たちの人生が、樹皮、泥、木の枝など、森の中にある素材によって形作られ、目の前に蘇ってくるのです。

森にある素材で出来た車

泥と木の枝から刻み出された鳥が木の枝に留まっている。
「巣箱」のアプローチ(初期のバリアント)

これは倒木の橋を渡って丘へと至る「巣箱」のアプローチの初期のスクリーンショットにオーバーペイントを施したものです。

「巣箱」の外門

この画像は「巣箱」の入り口の描写のアイデア出しのために描かれたもののひとつです。「巣箱」のデザインで難しかったところのひとつに、それが伝統的な人工の砦や、ファンタジー世界の要塞のような見た目にしないということがありました。私たちは「巣箱」に、それが作られた目的の含意やヒントを持たせつつ、どうにかして偶然できた物と意図して構築された物の境目にある物体に見せたかったのです。

 


本シリーズの次の記事も楽しみにしていてください。次回は Plamen 'Paco' Tamnev がキャラクターアートについての記事を投稿する予定で、その次の回では Zdravko Pavlov が『Book of the Dead』のテーマとアセット制作について、彼の樹木に対するアプローチと合わせて語ってくれます。そのあとにも様々な記事をお届けする予定です。

6 月 19 日から開催される Unite Berlin では『Book of the Dead』の環境をご自分で探検していただける試遊台をご用意しています。また Julien Heijmans がデモの環境アートに関するプレゼンテーションを行います。完全なスケジュールはこちらでご覧ください(英語)。

Book of the Dead』の詳細はこちらのリンクからご覧ください。

2018年6月1日 カテゴリ: Industry | 7 分 で読めます

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