Unity は本日、Weta Digital のアーティスト用ツール、コアパイプライン、知的財産、そして世界的にも評価されるエンジニアリング人材買収の最終合意に達したことを発表しました。アカデミー賞受賞で知られる Weta Digital の VFX サービスチームは、WetaFX の名称で独立会社として存続し、メディアおよびエンターテインメント業界における Unity 最大の顧客となります。業界をリードする VFX ツールと Weta の素晴らしいチームが持つ技術力、そして Unity の開発とリアルタイム 3D に対する知識を組み合わせることで、メタバースの可能性を存分に解き放つツールをお届けしたいと考えています。
『ロード・オブ・ザ・リング』の最初の予告編が映画館で公開された時のことを今でも覚えています。映画本編ではなく予告編です。震えるほどの興奮を覚えました。私はそれと同じ体験を、シーザーやナヴィ、キング・コング、そして Weta Digital が関わっているとも知らずに鑑賞した数々の名作映画を見る中で、何度も体験することになります。偉大なる天才ピーター・ジャクソンと、このニュージーランドを拠点とするスタジオに集約された高度な経験と才能の価値を知ることになる以前から、私は彼らのファンでした。
Weta Digital のパイプラインは 3D 制作、シミュレーション、レンダリングのための史上最も完成されたツールチェインを構成しています。ピーター・ジャクソンと Weta Digital 全チームの素晴らしい才能は、私達 Unity の全員に驚くほどのインスピレーションをもたらしてくれました。
Weta Digital の統合ツールと優れた科学者、技術者陣の力を借りて、想像力を形にしようとするコンテンツクリエイターに使いやすく高性能なツールを届けるという Unity の使命の実現を加速させます。Weta Digital のパイプラインはアーティスト第一を理念に開発されてきました。その結果として生み出されたのが、決して遅れの許されない数百もの映画とテレビ制作のスケジュールの中で、最高のビジュアルエフェクト(VFX)を実現してきた驚くべきツールセットです。
この他にはない世界的な VFX ツール群を世界中のクリエイターとアーティストに届け、さらにツール群が Unity プラットフォームに統合された暁には、次世代の RT3D を生み出し、メタバースの未来を形作ることが私たちの目的です。メタバースが何であり、どんなものとなるにせよ、それを作り出すのは皆さんのようなコンテンツクリエイターであると私達は信じています。
Weta Digital の 15 年間にわたる高度な研究と開発がもたらしたイノベーションの広がりと深さを、以下のリストで少しだけご覧にいれます。個々のツールは、それぞれに素晴らしい結果を生み出せますが、その真価は統合されたパイプラインの一部であることにあります。1 つのツールでなされた変更が、別のツールに即座に反映され、複数のアーティストが協力して想像力を形にすることができるのです。これらのツールは、『アバター』、『ブラック・ウィドウ』、『ゲーム・オブ・スローンズ』、『ロード・オブ・ザ・リング』、『PLANET OF THE APES/猿の惑星』、『ワンダーウーマン』、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』を始めとする、数々の受賞歴で知られる映画作品やテレビ作品を生み出すための基礎となってきました。
買収のもう 1 つの目玉は Weta Digital から Unity に引き継がれるアセットライブラリです。市街環境、自然環境、動植物、人間、人工物、マテリアル、テクスチャなど多くが含まれます。WetaFX チームは、今後も大作映画とテレビ作品のために業界最先端の VFX 制作を続け、このアセットライブラリへのアセットの提供をさらに進めます。
最後に Unity のグラフィックスアーキテクト Natasha Tatarchuk とビジョナリーにしてアカデミー賞受賞 VFX アーティスト Joe Letteri 氏がこれらツールの力と可能性について語ったこちらの動画をご覧ください。
Weta Digital のツールが持つ可能性を最大限に引き出すために、Unity はこのパイプラインの統合に取り組み、映画並みのリアリズムからモバイル端末上でのリアルタイム XR に至るまでの幅広い分野でコンテンツを届けられるようにします。これには、SpeedTree(VFX からリアルタイムまでに活用される実績ある植生スケーリングツール)、Pixyz(大型で複雑なモデルを管理する高機能サービス)などの Unity の他のコンテンツツールとサービスとの連携が含まれます。
私達の目標は Weta Digital のツールをクラウドに対応させ、アーティストが既に使用しているワークフローに容易に組み込めるようにすることです。Maya、Houdini などのデジタルコンテンツ制作(DCC)ツールでそれら高度な機能をじかに簡単に利用できるように、Unity エンジンやその他のプラットフォームにコンテンツを移動し、操作することも簡単となるはずです。
ビジョンはシンプルです。慣れ親しんだ DCC のキャンバスをそのまま使いながら、『アバター』や『ワンダーウーマン』などの映画で用いられた成長を続ける強力なツール群が利用可能になり、さらにコンテンツライブラリから珠玉のコンテンツを手に入れて、クリエイターとしての夢を実現できます。
そして最後に、この買収が Unity にかかわる現在と、そして未来のクリエイターにとって何を意味するかをご説明します。ゲームに、映画に、さらにその先に… 私達の考えでは、今、リッチでインタラクティブ、魅力的な 3D コンテンツに対する需要が一気に高まろうとしています。
私達はコンテンツ制作の敷居を下げるために、さらに力を尽くさなければなりません。この買収はそのビジョンを実現するための基本となる要素の 1 つです。そして、コンテンツクリエイターがすでに利用しているツールで、それを実現したいのです。Unity において、Maya において、Houdini において、その他さまざまなツールにおいて。クラウドを使い、高度なツールをより簡単に利用可能にすることで、コンテンツクリエイターに圧倒的な力をもたらしたいと考えています。このビジョンをすべて実現するには、それなりの時間がかかるでしょう。ですが、今回の買収がその第一歩になると考えてください。
そして、その想像力とビジョンをもって、私達にインスピレーションをもたらしてくれる Weta チームに感謝します。共に歩むこの未来を楽しみにしています。
私は Weta Digital の創造物を Unity に迎え入れられることに喜びを隠せません。以前に、次のような素晴らしいマオリ語のことわざを耳にしました。
Nā tō rourou, nā taku rourou ka ora ai te iwi
直訳するなら、「あなたのパン籠と私のパン籠で、私達皆が繫栄する」。力を合わせることで、より大きなことを成し遂げられる。私達は今まさに、この思想を実現しようとしています。