「Unity for All 2021: Tech and Creator Showcase」では、最新機能や今後登場する予定の機能の概要や、『Oddworld: Soulstorm』や『Humankind』、『Crash Bandicoot: On the Run!』の制作チームからの裏話が紹介されました。
基調講演全体をご覧いただく時間がない方は、本記事でぜひ基調講演のハイライトをお読みください。
GDC Showcase 2021 は、私たちがこれまで慣れ親しんできたコンベンションとは見た目も雰囲気も異なりました。しかし、私たちが取り組んできたことを Unity コミュニティ全体で共有し、Unity プラットフォームがクリエイターにどのような力を与え続けているかを見たいという強い気持ちは変わらずそこにありました。
今回は、事前にリモートで各部分の撮影を行い、それらをつなぎ合わせて配信する方式を取りました。Unity のゲーム部門のジェネラルマネージャーである Kat Strafford が司会を務め、さまざまな Unity の専門家やクリエイターが参加して、最新技術や今後出てくる技術を紹介したり、今年リリースされる新しい LTS や Tech ストリームで搭載された機能の概要を説明したりしました。
私たちが今回の基調講演で最も良かったこととして取り上げたいのは、『Oddworld: Soulstorm』、『Due Process』、『Subnautica: Below Zero』、『Humankind』などのゲームを開発したチームによるクリエイターストーリーが随所にちりばめられていたことです。このパートにはソロの開発者から大規模なスタジオまで、さまざまなクリエイターが参加しており、プロジェクトの内容はそれぞれまったく異なります。しかし、すべてのプロジェクトで Unity が使われていることは共通です。
通常の基調講演では、目を見張るような最先端の技術が紹介されますが、今回の基調講演ではまず、Unity 開発者がゲームを作るための強固な基盤を提供するために施された改良が取り上げられました。品質、生産性、パフォーマンスに重点が置かれ、最もインパクトのある Unity エンジンのアップデートは、より効率的なワークフローと安定した機能によるユーザー体験の向上を目的としたものとなっています。
Unity 2020 LTS がリリースされ、TECH ストリームからも Unity 2021.1 が間もなく登場します。どちらのリリースも、お客様のニーズに合ったソリューションを提供するように設計されています。デフォルトとなる LTS バージョンは、2 年間のサポート、タイムリーなバグ修正、定期的な改善により、より高い安定性を確保します。TECH ストリームの各バージョンは、常に最新の技術に触れたい方のために、最新技術や開発中の機能にもアクセスできるようになっています。
TECH ストリームのリリースも従来の年 3 回から年 2 回に変更し、安定性を高める方向にシフトしています。リリースサイクルが長くなることで、安定化フェーズも長く取ることができ、リリースの間でツールの安定性と品質を検証し、改善する時間をより長く取ることができるようになりました。また、パッケージのライフサイクルも変更し、機能の完成度や安定性を示す方法を明確にしました。
最新のリリースでは、3 つの重要な分野に焦点を当てています。ビジュアルスクリプティング、ネットコード、そしてレンダーパイプラインです。ビジュアルスクリプティングとネットコードについては本記事の後の部分で改めて触れます。レンダーパイプラインについては、新しい TECH ストリームのリリースとなる Unity 2021.1 でグラフィックパッケージが Unity のコアエンジンに統合されるという大きなニュースがあります。この移行により、新しいグラフィックス機能を使った作業が簡素化され、最新の検証済みグラフィックスコード(ユニバーサルレンダーパイプライン、HD レンダーパイプライン、シェーダーグラフ、Visual Effect Graph の最新バージョン)を常に使用できるようになります。
Unity 2020 LTS はすでにご利用いただくことができます。ここでは、Unity 2020 LTS に盛り込まれた何百もの細かな改善点のうち、皆様のワークフローに実質的な影響を与えるものをご紹介します。
Unity 2021.1 TECH ストリームリリースでの主な変更点をご覧ください。ほとんどはワークフローを効率化し、効率を向上させることを目的としたものです。
2021.1 TECH ストリームリリースでは、ビジュアルスクリプティングが Unity エディターのコア部分として利用できるようになります。この変更が何を意味するのかをご説明します。
ビジュアルスクリプティングでは、従来のコードの代わりにノードベースのグラフを使用して、ゲームのインタラクションや動作を作成することができます。これにより、視覚的に物を見て考える方や、コーディングをしないクリエイターが、ゲームのロジックやメカニクスを簡単に作成、テストできるようになり、チーム内のさまざまな部門間でのコラボレーションもスムーズになります。アーティストやデザイナーにとっては、プログラマーの助けを借りることなく、エディターでより多くの作業をこなすことができ、自分の作品をより直接的にコントロールできることになります。
ビジュアルスクリプティングは C# によるスクリプティング機能と併せて提供されているので、ビジュアルスクリプティングと従来のコーディングのどちらか一方の方法で作業することもできます。また、両方を併用することで大きなメリットを発見することもあるでしょう。プログラマーにとっては、アイデアを素早くプロトタイプ化したり、実装したりするのに役立つ代替ソリューションとなります。また、チームメイトのためにカスタムノードやツールを作成することもできます。
ビジュアルスクリプティングが Unity のネイティブ機能となった今、スクリプトやステートマシンのコンポーネントを追加するだけで、すぐに制作を始められるようになりました。今回のリリースでは、ネイティブのビジュアルスクリプティングのワークフローが最適化され、ツールが 1 つのウィンドウに集約されて生産性が向上しました。また、ビジュアルスクリプティングは、新しい入力システムにも対応しています。
こちらのデモをご覧いただけば、いかに簡単に制作を始められるかが分かると思います。
Netcode Core の最初の実験的な Unity パッケージは、2021 年 3 月 23 日の新しい TECH ストリームのリリースと同時に提供されます。ネットコードとは、ネットワーク接続されたマルチプレイヤーゲームを管理するためのソリューションとリソースの体系を指します。昨年、皆様からのフィードバックを受け、GameObject を使うプロジェクト向けのネットコードソリューションの提供に方針を転換し、また、開発をオープンにして才能あふれるネットコードのコミュニティと協働で開発を進めることにしました。
私たちは、ファーストパーティで完全にサポートされるネットコードソリューションに関する、2 つの重要な分野に投資しています。
また、ネットコードを最大限に活用していただくための教材にも投資しており、最初のサンプルゲームとして小規模な協力型マルチプレイヤーゲーム「Boss Room」を公開しました。各キャラクターはそれぞれ異なる能力を持っており、この能力とチュートリアルが対になって、この種のゲームのネットワークの作り方にまつわる要素を示すようになっています。「Boss Room」は、さまざまなタイプのマルチプレイヤーゲームの作成方法やネットワーク接続方法を学ぶための教育用テンプレートとして計画されている教材の第 1 弾となるものです。
「Boss Room」サンプルゲームは、TECH ストリームのリリースと同時に GitHub で公開されます。このサンプルがコミュニティとともに成長していくことを期待しています。「Boss Room」サンプルゲームのアーリーアクセス版のダウンロードはこちらのページで、4 月 7 日から行えるようになります。公開までしばらくお待ちください!
2D の分野では、ここ数年で導入した多くのグラフィックス機能をより強力にするため、パフォーマンスとユーザビリティの向上に重点を置いています。Unity 2021.1 TECH ストリームリリースには、以下のような内容が含まれています。
Unity は Arm 社と共同で、ライティングシステムの不要なトランザクションの数を減らすことで、メモリの帯域幅の節約を図りました。また、レンダリングパスの数を減らすことで、帯域幅とフレーム時間が大幅に改善されました。これらの改善により、ユーザーの負担を増すことなく、Unity クリエイターのコンテンツをさまざまなモバイルデバイスでより消費電力に対する効率の高いものにすることができます。
新しい「Dragon Crashers」2D デモは、Unity の 2D ツールの使用例を見せるためのサンプルプロジェクトとして作られたもので、Unity アセットストアから無料でダウンロードすることができます。
ArtEngine の Upres 2.0 のリリースをお伝えできることを嬉しく思います。このツールはリマスタリングツールの水準を高め、その新たな業界標準を示すツールです。Upres 2.0 を使えば、古くなったアセットの品質を現在求められる基準まで引き上げ、その寿命を延ばすことができます。スタジオは保有しているコンテンツを将来にわたって使えるようになり、Upres 2.0 を通したコンテンツは次世代のコンソールやプラットフォームでも驚くほどの美しさで表現されます。
ArtEngine は、パイプラインの至る所に存在する、時間のかかる反復的な素材作成作業を、AI を使って取り除くことができる Unity の AI アシスト制作ツールです。この度、GDC Showcase の開催と Upres 2.0 の発売を記念して、ArtEngine を大幅に割引いたします。詳細はこちら.をご覧ください。
Insomniac Games 社のプリンシパルテクニカルアーティストである Nathaniel Bell 氏は、Upres 2.0 を「市場で最も優れたリマスタリングツール」として紹介するとともに、ゲームの素材作成のための新しいワークフローを開発するために使用された ArtEngine の機能について説明しています。
自動プレイテストソリューションの Unity Game Simulation を使うと、実ゲームのプレイスルーを数千回分クラウド上でシミュレートし、テストの数、頻度、スコープを飛躍的に向上させることができます。
結果はまったく驚くべきものでした。
私たちは、クリエイターがどのように Unity を使って成功したかということ以上に Unity のストーリーをよく伝えるものはないと考えています。「Unity for All」では、さまざまなタイプの Unity クリエイターが登場し、それぞれの課題や目標、そして Unity がどのようにクリエイターたちを成功に導いたかというストーリーを紹介しました。
世界中のクリエイターが Unity を、現実の世界に変化をもたらすストーリーを伝え、私たちがお互いに、そして私たちが共有する世界をよりよく理解するために役立てています。2018 年、私たちはこうしたクリエイターたちや、プロジェクトや社会的課題に対するクリエイターたちの取り組みを称え、支援するために「Unity for Humanity」プログラムを立ち上げました。このプログラムでは、教育、経済的機会、持続可能性、健康と福祉、インクルーシブなストーリーテリングなどをテーマとするプロジェクトに取り組んでいるクリエイターに対して、技術、マーケティング、および金銭面での支援を行うものです。
前回の募集で助成の対象となった 5 件のプロジェクトに対して、それぞれ 2 万 5,000 ドルの助成金のほか、4,000 ドル相当の Unity Professional Services サポート、および Unity 社員によるメンターシップが提供されます。今週のブログで、助成を受けることになった感動的なプロジェクトについてご紹介しますので、ご期待ください。
次回の Unity for Humanity による助成への応募は 4 月 22 日から受け付け開始します。世界を変えるような大きなアイデアをお持ちの方は、こちらのページで詳細をご確認の上、ご応募ください。
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GDC Showcase 2021 はとても楽しいイベントとなりました。また、去年 1 年間がいかに過酷で奇妙なものであったかを思い知らされました。去年の今頃、GDC 2020 の準備をしていたところにパンデミックが到来し、直前になってイベントが中止になってしまいました。今年、デジタル開催という形はありますが、イベントに戻ってくることができ、そこで 2020 年にゲームが果たした本質的な役割を振り返ることができ、感激しました。ゲームは友人とつながる場を提供し、辛い現実をしばらく忘れる時間を提供してくれました。
基調講演全体はこちらでご覧いただけます。また、GDC Showcase 2021 の講演、プレゼンテーション、ハンズオンワークショップ、デモなどのラインナップはこちらですべてご覧いただけます。
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