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AR を使って社会に良い影響を与える ー Steven Christian 氏の活動

2021年8月16日 カテゴリ: ニュース | 17 分 で読めます
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Unity for Humanity は、Unity Social Impact の一環として、社会に良い影響を与えるための活動をしているクリエイターと協働して、その活動の影響力を高めるためのプログラムです。Unity for Humanity プログラムの責任者として、私は画期的かつ世界を変える仕事をしている刺激的なクリエイターたちと毎日つながるという幸運に恵まれています。先日、Iltopia Studios の創業者である Steven Christian 氏と、アート、教育、アクティビズムを融合させ、コミュニティが社会の変化に積極的に関わっていく手助けをする彼の活動について話しました。このインタビューでは、彼の仕事、彼がリアルタイム 3D に出会うまでの道のり、彼のキャリアにおける輝かしい瞬間や試練、そして彼から他のクリエイターに送るアドバイスまで、さまざまなことについて聞かせてもらいました。

Paisley:Steven さんは、かなりユニークなクリエイターとしての道を歩んでいますね。リアルタイム 3D を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

Steven:私がリアルタイム 3D に関わるようになるまでの道のりはユニークなものでした。実は、元々 3D 全般に消極的だったのです。しかし、漫画に拡張現実を活用しているところを見て、私は 3D 技術の可能性に目を向けるようになったのです。私は常にジェネラリスト、つまりビジュアルアートの何でも屋であることを誇りに思っています。T シャツにエアブラシで絵を描いたり、ペインティングをしたり、コミックイラストを描いたり、ロゴデザインをしたり。私はあらゆることに挑戦してきましたが、3D は私がキャリアを始めたばかりの頃には身近なものではありませんでした。 

子供の頃から芸術に親しんできましたが、大学に入るまでは自分の創造性を発揮することはありませんでした。興味深いことに、私は古き良きポケット PC の時代に Windows Mobile を使った開発に携わっていました。それから私はフットボールの奨学金を得て、ハワイ大学でフットボールをしていました。しかしその間に、私は 2 回の股関節再建手術を受けることになりました。怪我をしたことで私のスポーツへの情熱は失われ、私には埋めなければならない空白ができました。その頃、Aaron McGrudder 氏の『The Boondocks』に憧れていたので、自分でも漫画を作ってみようと思いました。それは文化的な価値があり、革新的なものでした。  

学校の新聞に掲載された漫画から始まり、その後、ウェブコミック、単行本、そして YouTube のショートアニメシーンへと移っていきました。怪我から回復していく過程で、自分を表現し、アスリート以外の自分を知ることができたので、この活動は多くの面で私にとっての癒しとなりました。 

その後、オレゴン州立大学に編入し、選手としてのキャリアを終えると同時に、学際領域の研究で修士課程を修了しました。私は白人の多い大学に在籍するアフリカ系アメリカ人学生選手が経験する格差について調査し、そうした学生選手たちがフィールド外よりもフィールド内で成功を収める可能性が高い理由について検討したのですが、これは有益な経験でした。私は修士論文としてグラフィックノベルを書き、そのイラストも自ら手掛けました。 

その数年後、Breakfast Club に出演した Will.I.Am 氏の AR コミックブックのデモを見て、Unity の存在を知りました。その後、Adobe Max に行き、別の AR のデモを見ました。触れてみると、どうしてもこの媒体を使ってみたくなりました。私は、紙媒体のコミックと YouTube のアニメーションをシームレスに融合させたいと考えました。それが、Unity と AR で実現できると感じました。 

数か月間 Unity で遊んでいるうちにコツがつかめてきて、はっきりと道筋が見えてきました。2D アニメーションだけでなく、3D やビジュアルエフェクトも、何時間もレンダリングされるのを待つことなく試してみることができたのです。さらに、そのコンテンツを現実世界のどんな文脈にも当てはめることができるのです。それは私にとって、文字通りゲームを変えるものでした。

Paisley:独学で Unity を学び、漫画やストーリーテリングへの愛を AR に結びつける方法を見つけられたことはとても素晴らしいことだと思います。Unity を使った初期のリアルタイム 3D プロジェクトの中で、記憶に残っているものはありますか。また、この活動の動機は何だったのでしょうか。

Steven:私が AR 体験の作り方を学んでいた時に取り組んでいたテストプロジェクトを別とすると、私が最初に手がけた本格的な AR プロジェクトは『Eyelnd Feevr』のアプリになりますね。クリスマスの後すぐに、メインキャラクターである Roscoe の 3D モデルを作りました。そして、Roscoe がインターネットで人気のあるダンスを私の漫画本の表紙の上で踊るのはどうだろうかと考えました。 

ダンスや音楽を変えながら、表紙の上で Roscoe が踊っているところを見られる体験を作りました。私は、アニメーションとユーザーの入力を使って、どのような形で自分の漫画に命を吹き込むことができるかに興味がありました。キャラクターを踊らせることは、そのための簡単な方法でした。私の漫画は、アメリカにおける黒人の体験について考えることを目的としているのですが、このこととの関連性は暗示されていたように思います。インターネットでよく見かけるダンスの多くは、黒人の子供たちが考案したものです。このような生活の断片を切り取ることは、キャラクターとのつながりを深めるだけでなく、革新的な方法で文化に敬意を表すことにもなります。 

Eyeland fever cover photo with a dystopian background and graffiti title.

Paisley:Unity for Humanity の助成金への申請書を審査している時に、初めて『Eyelnd Feevr』に出会いましたが、すぐにRoscoe と、キャラクターの世界を生き生きと表現する貴方の力量に魅了されました。貴方の創作過程についてもっと知りたいと思います。『Eyelnd Feevr』の制作中に驚いたことはありますか。

Steven:『Eyelnd Feevr』は私の自慢の一品です。自分の目的を求めて Iltopia の世界を縦横無尽に駆け巡る子供たちの物語です。Roscoe、Vanessa、そしてこの子たちの守護者である Cadbeary をメインキャラクターに据え、彼らが逆境を乗り越えていく様子が描かれています。この話は、私が大学でフットボールをしていて 2 回目の股関節再建手術を受けた後に作り始めたものです。ですから、私にとって本当に身近な話なのです。私は、アメリカにおける黒人の体験を描いた物語をもっと見たいと思い、この物語の制作を始めました。より深いレベルで私に語りかけてくるような、この世のものとは思えないような幻想的な要素を持った作品です。 

私が AR の世界に入ったのは、ストーリーテリングの体験にもっとテクノロジーを取り入れて、さらに心を揺さぶることができないかと考えたのがきっかけです。このシリーズは、学校の新聞に掲載された漫画から始まりました。デジタルで絵を描けるタブレットを手に入れたのをきっかけに、ウェブコミックやアニメーションの世界に足を踏み入れました。アートの持つ物理的な限界に縛られなくなるということは私を大きく力づけてくれましたが、しかし、デジタルアートの世界でやったことが、自分が望んでいたほど物理的な世界には反映されないこともわかりました。コンベンションをやる時、それは特に顕著でした。漫画やアートプリント、ステッカーなどは人に見せることができましたが、シリーズのために制作していた大量のアニメーションを見せることはとても困難でした。 

漫画やプリント、ステッカーにアニメーションを取り入れることができる AR の可能性を知ったとき、これをもっと勉強しなければと思いました。デジタルアートとフィジカルアートのどちらかを選ぶ必要はないと思ったので、そうして良かったと思います。私はどちらもできたし、皆さんに『Eyelnd Feevr』の物語の世界のすべてを体験してもらうことができました。私の作品を見る人は本を手に取り、読み、見て、聞き、そして対話することができます。本との付き合い方が大きく変わりますし、個人的には、本を手に取って読みたいと思わない人にとっても、本が与える体験がより魅力的なものになると思っています。 

AR の世界にいて驚いたのは、AR を使った印刷メディアのイノベーションがあまり見られないことです。AR を使って漫画にアニメーションを取り入れるという私の目標は短期間で私の作品のレベルを飛躍的に上げてくれましたが、それは見ている人の心に響くからだと思います。私が『Eyelnd Feevr』でやった仕事が他の人の目に触れて、その人たちが自分の作品に AR をもっと取り入れてみようと思ってくれれば、と思います。

Paisley:貴方が『Eyelnd Feevr』の世界をオーディエンスや読者に伝えようとする献身的な姿勢にとても感銘を受けました。多くの独立系クリエイターが知っている通り、開発とそれを配布するプロセスは厳しいものとなることがしばしばあります。作品を作り続けるためのモチベーションを保つ言葉やインスピレーションについて教えてください。

Steven:「Create and Conquer!」です。つまり、固定観念を克服し、逆境を克服する機会を作るということです。

ハワイ大学でフットボールをしていた時に、2 度目の股関節再建手術を受けました。そこから回復するまでの数か月間、車いすでの生活を余儀なくされました。私は 21 歳で股関節の大きな手術を 2 回受け、歩くことも出来ないくせに大学でアスリートを名乗っていました。Xbox を盗まれたのもその頃だったと思います。慣れ親しんだ生活がもはや私にとっては現実には存在しないものになっていたのです。違和感があるだけでなく、自分の人生に主体性がないように感じられ、また周りの人からの扱いも変わってきてしまい、深刻なアイデンティティの危機に陥りました。その結果、私は自分の世界に引きこもってしまいました。 

自分自身とのつながりを取り戻そうとした時に、私は自分の持っていた創造性とのつながりを見出しました。最初はなんてことない落書きだったのが、次第に肉付けされたキャラクターと世界になり、自信を持ってネットに投稿しました。ポジティブな反応が返ってくるようになると、自分の直接的な行動が、自分自身の気持ちを高めたり、他人に評価されることにつながっていることがわかりました。それが心に残っています。 

「作り続ければ、自分に対する不安を克服できるはずだ」と自分に言い聞かせるようになりました。不安というのは、主に怪我をする前のようなアスリートとして振る舞えないこと、そしてアスリートとして存在する以外には自分が世界に提供できるものが何もないと感じていたことです。もし、私が何かを作り、それを世界に発信し続ければ、内的にも外的にも逆境を乗り越えられる可能性があると考えたのです。 

自分が納得するまで、毎日そう言い聞かせていました。「Create and Conquer!」が私のキャッチフレーズになったのは、自分が問題を克服するために必要だったことを思い出させてくれるからであり、どんなに暗い見通しであっても前に進むためのモチベーションになるからです。

Paisley:この感覚が大好きです。個人的な困難の経験をアートに結びつけるという行動は、私たち全員が共通して取るものだと思います。正直な話を他の人と共有することで、不安や恐怖を克服し、より深いレベルでつながることができることを実感しています。「Create and Conquer!」は、あらゆるステージのクリエイターに対して、高いモチベーションを与える言葉だと思います。ここまでのお話を踏まえた上で、これからリアルタイム 3D を始めたいと考えているクリエイターにアドバイスをお願いします。何かヒントはあるでしょうか。

Steven:これから始めようとする人に何かを伝えるとしたら、ツールを本気で使い込んで自分に何ができるかを把握すること、ですね。これは創造的な意味で、私を自由にしてくれたやり方なのです。 

AR は、物理的に不可能だったものを作り出すことができます。漫画本の中でアニメを再生する?それは気が遠くなるような仕事ですよね。踊るステッカーを作るのはどうでしょうか。それが、AR では可能なのです。 

創造に関するテクノロジーの分野でジェネラリストとして活躍している人にとって、AR を使って制作を行うことはとても自然なことです。ですから、この分野を開拓しようとしている人には、既成概念にとらわれない発想を持ち続けることをお勧めします。そうすることで、自分の内なる声や情熱を見つけるだけでなく、自分の道を切り開くことができるのです。どこから手をつけていいかわからない人のために、私は去年、自分が始めたときと同じ立場の人たちに向けたリソースを開発しました。 

私の Youtube チャンネル「Stuck On An Eyeland」では、プロジェクトの開始から完成までを収めたライブストリームやタイムラプス映像を公開しています。皆さんにフィルターを通さずに作品の工程をお見せするためにこういう活動を行っています。私の最新のプロジェクトがどのように作られたのか、気になりませんか?皆さんにその過程をお見せします。また、私の作品の工程をより深く知りたい方のために、Skillshare のコースを作ることにしました。没入型体験のアーティストになるために必要なものや、私が制作の工程で採用しているヒントやコツを多数、ステップバイステップで紹介しています。私が提供しているすべてのコースをチェックするにはこちらをご覧ください。[1]

私が 2019 年 12 月に初めて Unity を開いた時、没入型体験を作るのは底の知れない考えのように思われましたが、決意とビジョンが私を今いる場所まで導いてくれました。私は、自分がこれまでやってきて得てきた知見を共有することで、他の人も同じようにできるように最善を尽くしています。

Paisley:Steven さん、今日は貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。貴方の活動に参加したいという人がいたら、何から始めることをお勧めされますか。

Steven:まず最初に YouTube、Instagram(@stuckonaneyelnd@iltopia)、Twitter で私をフォローしていただければと思います。私はこれまで携わったすべてのプロジェクトと、作品の制作工程を解説したチュートリアルも大量に公開しています。また、私のウェブサイト www.stuckonaneyeland.com では、AR をアート制作に取り入れる方法に関するブログなどを掲載していますので、ぜひご覧ください。

[1] これらのリンクは、読者の便宜を図るために情報提供のみを目的として提供されているものであり、Unity が推奨するものではありません。コースは Steven Christian 氏が提供しているもので、リンクから Christian 氏のサイトにリダイレクトされます。

2021年8月16日 カテゴリ: ニュース | 17 分 で読めます
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