私たちは、クリエイターが変化を促すうえで重要な役割を果たすと考えています。そこで、リアルタイム 3D を活用して、社会に良い影響を与え、世界をより良い場所にするクリエイターを支援するプログラムとして、「Unity for Humanity」助成金を立ち上げたのです。
ストーリーテラーやソリューションを提案する人たちにプロジェクトを推進してもらうために、私たちは資金に加えて、メンターシップ、技術サポートを提供します。また今年は、受賞歴のあるアーティストにして活動家である Common 氏と提携し、オーディエンスに対して「imagine a better world(より良い世界を想像する)」というテーマを最もよく表現したプロジェクトに与えられる「Imagine」助成金の創設も発表されました。
2022 年度の助成金には 200 件以上の申請があり、59 名の Unity の審査員により、ビジョン、社会的影響、インクルージョン、実行可能性などの観点から審査が行われました。Imagine 助成金の最終選考に残ったプロジェクトに対しては、Common 氏と彼のチームによる追加の審査が行われました。
本日は、2022 年度 Unity for Humanity 助成金の受賞者 4 名と、Imagine 助成金の受賞者をご紹介します。
Imagine 助成金受賞者
新しい国に移住することは簡単なことではありません。子供にとっては特にそうです。『Songs of Cultures』は、子供たちに新しい言語や習慣を遊び感覚で紹介し、その手助けをすることを目的としたゲーミフィケーション学習体験です。
教育関係者や保護者とのパートナーシップにより開発された『Songs of Cultures』は、AR を利用して見慣れた環境を幻想的な音楽の世界に変え、子どもたちと移住家族の社会的統合を促進します。このアプリは、音楽の楽しさを通じて、子供たちが文化の違いを知り、自分のルーツに感謝し、視野を広げることを目的としています。
『Songs of Cultures』は、A.MUSE によって制作されました。このスタジオは、アート、デザイン、テクノロジー、社会起業家精神の交差点で複合現実体験を生み出す、女性が設立したインタラクティブデザインスタジオです。共感、創造性、コミュニティを通じて、より多様で思いやりのある未来を実現することを使命としています。
A.MUSE 共同設立者の Binh Minh Herbst 教授は、自身の移民体験と Common の曲『Imagine』にインスピレーションを受け、『Songs of Cultures』が「若者と老人をつなぎ、家族の絆を深め、楽しい記憶を作り、保育園や小学校に文化的認識をもたらす」と期待しています。「バーチャル空間と現実世界を融合させることで、異なる生き方を共存させたい。」
『Songs of Cultures』が Imagine 助成金を獲得した今、A.MUSE チームはこの勢いを利用してアクセシビリティを高め、世界中のより多くの人々に彼女たちのゲームとその重要な教訓を届けたいと考えています。
『Songs of Cultures』の詳細はこちらでご覧ください。
人によっては病院は怖い場所で、小児ガンの患者さんは放射線治療の前や最中に不安を感じることがよくあります。Augment Therapy 社はこのような状況を変えるべく、放射線治療のプロセスを明らかにし、敷居を低くするために『Augment Adventures』を開発しました。
この体験では、AR を使って放射線治療室やそこで使う機械に事前に慣れ親しんでもらい、子どもたちの不安を和らげます。また、治療の予定日には『Augment Adventures』を使って、若い患者さんにストレスを軽減し、リラックスできるようデザインされたエクササイズの指導を行っています。
理学療法士の Lindsay Watson 氏は、20 年を超えるキャリアを通じて何百人もの子供たちと関わってきました。そして彼女は Steve Blake 氏と共同で Augment Therapy 社を設立し、小児治療に特有の問題に取り組んでいます。この会社は 2017 年から、リハビリ業界向けの遠隔医療と遠隔モニタリングが使える AR エクササイズの制作を始めました。2021 年には世界最大のデジタル小児医療アクセラレーターである KidsX に参加することを決めました。それ以来、同社は Children's Hospital Los Angeles(CHLA)と連携して、リアルタイム 3D 技術を活用して医療体験を改善するという共通のミッションに取り組んでいます。
Unity for Humanity 助成金により、Augment Therapy 社としては、より多様なアバターを統合し、リラクゼーションエクササイズのコレクションを増やし、治療スペースのカスタムレンダリングをさらに制作したいと考えています。
Lindsay は「子供たちとその家族が、恐れることなく医療や治療にアクセスできる世界」を作ることを Augment Therapy 社の目標に掲げています。「小児医療への取り組みには避けられない側面が数多くありますが、技術を活用してその体験を改善することが私たちの夢です」。
Augment Therapy 社の詳細はこちらでご覧ください。
うつ病患者の人には世界がどのように見えているのでしょうか。『Darkening』は、監督兼主役を務める Ondřej Moravec 氏を追いかけて、心の影のようなイメージを見るインタラクティブな VR 映画です。Ondřej によるスタイリッシュで没入感のある環境のアニメーションと感情を組み合わせて、視聴者はうつに対処する戦略を見つけ出しながら、うつ病の現実を体験します。
Ondřej はうつ病に対するスティグマ(負のイメージ)は変わる必要があると考えています。20 歳のときにうつ病の症状で入院した経験を元に、彼は彼のストーリーを共有し、メンタルヘルスの問題に対する意識を向上させることに取り組んでいます。「私は、うつを患っていると、単に悲しい日を過ごすだけではないことが広く理解されている世界を想像しています。うつは病気です。誰だって、何もなく『大丈夫』と思われたいものですが、そうでない時だってあります。そして、それは悪いことではありません」。
このような理解を促進するために、『Darkening』ではオーディエンスの意見を活用して、映画のアイデアを強化し、治癒に役立つアプローチを伝えています。たとえば、視聴者は鼻歌を歌ったり、声を出したりしてシーンを変えることができます。これは、Ondřej がうつの治療に取り組む中で、音声治療が重要な役割を果たしたところから来ています。
Unity for Humanity 助成金を受賞した『Darkening』チームは現在、大規模な配布キャンペーンを実施し、独自の VR 体験を広めることを計画しています。
「私たちは、うつを扱いつつ希望も感じさせる映画は、観る人が精神的な病に悩んでいるかどうかにかかわらず、とても重要なものだと考えています。オーディエンスの反応を目にして、オーディエンスと重要な議論を始められることを楽しみにしています」。
『Darkening』の詳細はこちらでご覧ください。
気候変動が私たちが直面する最も緊急な問題の 1 つであることは間違いありません。そして、Clément Le Bras 氏は持続可能な未来を確保するために斬新なアプローチをとっています。
Clément はプレイヤーの行動が現実世界に反映される、環境にやさしいモバイルゲーム『My Lovely Planet』の作者です。ゲームプレイ中に木を植えたり、海のゴミを片付けたりすると、現実の地球上でも同じ行動を起こすことができます。このゲームの革新的なコンセプトは、広告とアプリ内課金を活用することで実現されており、これによって『My Lovely Planet』は世界各地の重要な NGO プロジェクトに資金を提供することができます。
Clément にとって、技術とゲームは環境保全を行う上で信じられないほどの可能性を秘めたものです。「世界中の何百人ものプレイヤーが、心の中で『環境を守る』という 1 つのミッションを共有して団結するゲームがあったらどうなるでしょう。ゲームの中で行うすべてのことが、現実の世界でポジティブな影響を与える場所です。」遊びと実際の行動を結び付けることで、ゲーマーが私たちの地球を守るための取り組みにおいてかなり大きな力を持つ集団となりうるという考えに希望を抱いています。
Unity for Humanity 助成金受賞者となった今、Clément と彼のチームは、10 億本の木を植えて保護し、100 万トンのプラスチックを海から除去し、重要な生物多様性を保護するというミッションに対するコミュニティのサポートを構築することに注力する予定です。
「道具さえあれば、人はどんなに素晴らしいことができるかを目にしてきました。また、私はいつもゲームに情熱を注いできましたし、ゲームやストーリーテリングがいかに人々を感動させるかについて考えてきました」。
『My Lovely Planet』の詳細はこちらでご覧ください。
アフリカの人口は今後数十年で急増し、2050 年までに世界の人口の 4 分の 1 を占めるようになると予想されています。この成長をうまく迎え入れ、アフリカの若者に仕事の機会を提供するために、TOGUNA 社創設者の Pierre-Christophe Gam 氏は、アフリカの現在の限界を超えた現実を想像する必要性を感じています。
前向きな未来を描くデジタルとミックスメディアのハイブリッドなインスタレーションである『TOGUNA』は、美しい夢を実践的なソリューションと融合させて、アフリカが現在直線している問題に対処しようとします。このプロジェクトは、2070 年までに世界全体に向けてより持続可能性の高いモデルを提供しうる、経済的、社会的、精神的な回復をかかげた「アフリカのルネッサンス」というアイデアを元にしています。
プロジェクトのインスピレーションは、マリのドゴン族の伝統的な集会所(トグナ)から得ています。ドゴン族にとってトグナは、コミュニティが集まって意見を交換し、議論する場所なのです。『TOGUNA』はそのような場所の持つ雰囲気を再現し、アフリカ大陸の未来について汎アフリカ的に語り合うための、現代的かつインタラクティブなパブリックフォーラムとなることを目的としています。
Pierre-Christophe はこのように語ります。「未来を築くには、まずそれを想像する必要があります。私はこの慣習を、植民地時代以前の西アフリカのグリオの偉大な伝統の継承だと考えています。グリオはコミュニティの記憶の守護者であり、彼らはイニシエーションの歌や物語を通してそれを伝えてきました」。
『TOGUNA』が Unity for Humanity 助成金を得た今、Pierre-Christophe は彼のビジョンを実現し、大陸をまたいだ活気のあるコミュニティを築きたいと願っています。イギリスに拠点を置くプロデューサー、Crossover Labs と連携して、彼はロンドンとラゴスでプロジェクトの披露を行う予定です。それに続いて起きるであろう大衆の反応と議論を目にすることが今から楽しみです。
TOGUNA 社と『TOGUNA』の詳細はこちらでご覧ください。
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受賞者の皆様、おめでとうございます。また、2022 年の Unity for Humanity 助成金と Imagine 助成金へプロジェクトを応募された皆様、ありがとうございました。
最近 Discord に立ち上げた Unity for Humanity コミュニティをチェックして、私たちとつながりましょう。このコミュニティは社会に良い影響を与えるクリエイターが集まる場所です。ここでは、同じ志を持つ人々と出会い、プロジェクトのためのリソースを見つけ、Unity for Humanity に関する最新のニュースを知ることができます。
一緒に、より良い世界を想像しましょう。