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デジタルツイン技術でコミュニティを再構築する

2022年7月8日 カテゴリ: Industry | 7 分 で読めます
screenshot of user interface with snow covered mountain
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建築家や都市計画家は、モデルを 3D 化することで、景観の変化、気候変動、交通などにまつわる課題の解決能力を高めることができます。 

デジタルツインとは、物理的な資産、プロセス、またはシステムのバーチャルコピーと定義されます。そして、都市デジタルツイン(urban digital twin)とは、都市環境全体の物理的な資産をバーチャル空間で表現したものです。都市デジタルツインは、スマートシティに向けた世界的な動きの中で重要な役割を担っています。「スマートシティ」とは、都市環境における活動や変化を記録する Internet of Things(IoT)センサーなどのツールを使って、公共施設、移動パターン、およびインフラの活用や性能に関する価値あるデータを電子的に収集するコミュニティのことです。都市デジタルツインは、このデータを表現し、可視化するためのシステムとして機能することが多いです。都市デジタルツインは、大量の地図データとモデルデータを集約し、リアルタイムに可視化することで作成されます。

このため都市デジタルツインは、従来の建物模型の集合体を使った場合より正確な文脈で、都市環境の未来の状態を見ることができる能力を提供してくれます。また、設計者がプランニングプロセスを再構築し、ひいてはその民主化を進めるうえでも役立っています。ABI Research によると、2025 年までに世界の 500 以上の都市でデジタルツインが導入されるとのことです。現在、多くの都市で、都市景観をデジタルで再現し、デジタルツインがコミュニティで果たす役割を探る取り組みが積極的に行われています。 

そのような都市の 1 つにトロンハイムが挙げられます。ノルウェー第 4 の都市トロンハイムは、トロンハイムフィヨルドの海岸に位置しています。997 年にヴァイキング王オーラヴ・トリグヴァソンが築いたこの街は、北欧の豊かな歴史に彩られています。世界中の多くの都市がそうであるように、トロンハイムの地理的特性から、成長を可能にするために既存の都市景観を高密度化することが必要とされています。この実行に際しては、特に街がこれまで長い間維持してきた美しさや魅力を損なわないようにすることが、設計上の重要な課題となっています。 

2020 年、この地域の建築家たちは「Trondheim 2050」コンペで、自分たちの街の未来像のモデル化に取り組みました。このコンペは今後数十年にわたる市の成長のために、さまざまな視点を取り入れ、プランニングプロセスへの市民参加を高め、包括的な戦略計画を策定するという市の大きな取り組みの一環として行われました。

トロンハイム市のジオデータスペシャリストである Martin Vitsø 氏は、2050 年のトロンハイムの姿をモデル化するため、Unity に注目しました。

市民の手に未来を託す

Vitsø 氏は、各チームの SketchUp モデルと重要な地理情報システム(GIS)データを Unity に取り込み、トロンハイムの将来の可能性を正確かつインタラクティブに表現する作業を主導しました。 

異なる技術的ソリューションを使用する建築チームの間でこの種の作業の調整を行うことはもともと容易ではありませんが、都市の場合は、包括的なモデルを作成する際により大きなスケールで同じ課題に直面します。「今回のプロジェクトでは、ほとんど SketchUp しか使っていません。チームには、自分たちが作業する街の一部の SketchUp モデルが与えられ、まずこの SketchUp モデルに自分たちのモデルを配置するように指示が出されました」。

Martin は数年前に独自に Unity で実験を行うことを決めていましたが、この規模と公開フォーマットでの Unity の使用は今回が初めての試みでした。

「Unity は大きなデータの読み込みを処理することができました」と Vitsø 氏は言います。「高いレベルの解像度でスクリーンショットを撮ったり、360 度画像を含め、さまざまなプロジェクションを行えるスクリプトをプログラムできるのがとてもよかったです」。

screenshot of user interface
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その結果、トロンハイム市の 3D ビジョンは、各チームの提案する建物やインフラの変化を文脈に沿って見ることができる、詳細なデジタルビューとなったのです。

また Vitsø 氏は、Unity モデルによって Trondheim 2050 プロジェクトへの一般市民の参加を促し、住民からコメントを募る方法を見出したいと考えていました。彼は、トロンハイム市の既存の公共地図をよりインタラクティブにし、案内しやすくする方法を実験的に試みました。「市民の反応マップの背景は、すべて Unity で作った単一の高解像度アイソメトリック画像です。バーチャルリアリティ(VR)対応のバーチャルツアーも、Unity から出力された 360 度画像を使って作られています」。下の画像は、チームがトロンハイム市の住民が最も関心を寄せる分野を簡単に特定できるように、コメントをヒートマップに集約し、公開されている地図の 3D バージョンに重ね合わせたものです。 

screenshot of user interface

トロンハイム市のプランニングチームは、戦略的プランに組み込むために、住民の最も関心を持っていることや要望をまとめた決定版のリストをまとめるところまでたどり着きました。住民は、緑地の増加、公共の座席、車のない歩行者ゾーン、街を流れるニデルヴァ川へのアクセス改善などを希望していることがわかりました。 

このプロジェクトに対するトロンハイム市と市民からの反応は、非常に強いものでした。「3D や VR、インタラクティブな反応マップを市民参加の中に取り入れることができ、市の職員はとても喜んでいました。コミュニティを巻き込んでいく仕事は、全体的に公開のミートアップや印刷された地図に絵を描くといったアナログな作業がそのほとんどを占めていました」と Vitsø 氏は言います。 

「この方法で、より多様な人々がプランニングのプロセスに参加できるようになることを期待しています。都市計画のプランナーからは、従来の情報共有の手段に参加する人の多くは、すでにそのプロセスをよく知っていて、いずれにせよフィードバックを返してくれるだろうと言われています」。

スマートシティのためのデータ基盤

トロンハイム市にとって、Trondheim 2050 プロジェクトは始まりに過ぎませんでした。「このプロジェクト以前は、デジタルツインという言葉はあまり使っていませんでした。これまでも必要に応じて、カバーする領域の大小を問わず、街の 3D モデルを作ってきました。そのため、デジタルツインを維持・更新するよりも、新しい地図データから新しい 3D モデルを作成する効果的な手段に力を注いでいたのです」。

Vitsø 氏は、より合理化されたデータとモデルの共有が、デジタルツインとスマートシティに向けた動きの次の波となることを期待しています。 

「官僚の立場から言えば、他の自治体や国、民間の関係者と最新の文脈に基づくデジタルツインを簡単に共有できるようにしたいですね。現在は、特定のプロジェクトのニーズに応じて、モデルを決められた方法で作成し、モデルデータと特定のデータベースの特定のカラムを組み合わせるなど、手作業で処理することが多いのです。3D モデリングや建物情報のデータベース化については、全国的に取り組みが進んでいます。これは、すべての自治体に関係することだと思います」。

Vitsø 氏とトロンハイムで彼に協力する人々は、データを活用し、トロンハイムの未来を推進するための新しい方法を求めて、今も懸命に働いています。 

「包括的なデジタルツインの目的は、3D 都市モデルの活用を拡大し、ライブセンサーデータをデータレジストリから厳選された属性と合わせてそこに組み込んでいくことです。例えば、ある都市のエネルギー使用状況を分析する場合、3D 都市モデルに加え、各建物に関連する追加の情報が大量に必要になるかもしれません。私たちはすべての情報を持っていますが、複数のデータベースに分散しており、組み合わせるにはアクロバット的な作業が必要です」。

Unity では、ユーザーはデータを 1 か所に集約することができます。世界中の設計者や都市プランナーが、将来の計画が与える影響を視覚化し、データに基づいた意思決定を行い、一般の人々を巻き込んで遠隔コラボレーションを行うために活用できるデジタルツインの力を素早く見出しています。 

「Unity は、一般の人々に見せたい映像作品を作るためのプラットフォームだと考えています」と Vitsø 氏は言います。「Unity のようなエンジンは、ユニークな機能を提供してくれます」。

Unity のデジタルツインソリューションの活用方法についてご興味を持たれた方は、弊社チームまでご連絡ください。

2022年7月8日 カテゴリ: Industry | 7 分 で読めます
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