『Lion』は、Unity のアートツールにとって重要なマイルストーンであり、クリエイターに力を与えるツールを構築するための私たちの継続的な取り組みを明らかにするものです。
このコラボレーションデモは、アーティストと開発者が制作レベルで協力し、リアルタイムかつ高い忠実度を持つビジュアルの可能性の限界を押し上げることで、何が起こるのかを紹介するものです。
この制作現場での取り組みと技術的な取り組みとを連携させたデモは、Wētā Digital、SpeedTree、Ziva、SyncSketch、および Unity エディターのアーティストツールで制作したコンテンツを、リアルタイムパイプラインにおける統合デモの一部として家庭用ハードウェアで体験できるよう、PlayStation 5®で 4K、30 fps で動作させるというイノベーションを披露するものです。
オリジナルのオフラインデモ用アセットは、Monster Emporium Animation School の学生が作成しました。ライオンは、Ziva VFX のバイオメカニカル弾性体ソルバーでソフトボディダイナミクスのシミュレーションを使い、実世界での計測値でシミュレートしました。
その後、シーンの更新を行い、パフォーマンスの高いリアルタイム体験を可能にしました。ライオンのアセットは、機械学習された Ziva RT でフォーメーションで強化され、新しい Ziva RT Unity プレイヤー(SIGGRAPH 2022 でプレビュー版をローンチ)を使用して動的に実行され、最高の忠実度を持つデフォーメーションを実現しています。
Ziva RT Unity プレイヤーは、実行時のパフォーマンスを最適化するために、SIMD に最適化されたコードを並列実行し、Unity の Burst テクノロジーを活用して、リアルタイムで動的かつインタラクティブなデフォーメーションを実現します。
新しいデモ環境では、SpeedTree で作られた植物を使用することもできます。SpeedTree Cinema で作成したアセットをリアルタイムに最適化し、ライオンの近くに土埃にまみれた茂みを追加し、地平線にアフリカを象徴するモパネの木の形を構築しました。これらのアセットは、植物アセットと細かくグルームされたクリーチャーの解像度を一致させるために、個別の高解像度テクスチャを持つ Games FBX としてエクスポートされています。
リアルな表現のために、Wētā Digital のヘアおよびファーグルームのためのツール Wig(プレアルファ版)で、Ziva のでフォーメーション技術を補完して、忠実度とアーティストのディレクションのしやすさのレイヤーをもう一段階追加し、親ライオンと子ライオンの両方に大きなネコ科動物らしいたてがみとファーグルームを与えました。
Wētā FX、DNEG などの VFX ハウスで本制作レベルのグルームを作成した経験を持ち、『Lion』の Unity テクニカルアーティストを務めた Sara Hansen は、「Wig はこれまでとは異なる仕事の仕方を実現してくれました。私がこれまで使った中で最も速いグルーミングツールです」と述べています。
「他のグルーミングパッケージでは数か月かかるような高品質のヒーローグルームも、Wig ならはるかに短い時間で作成できます。2 週間ほどでできてしまいました。また、他のツールで何週間もかけて作っていたグルームも、Wig では 1 日や数日で、しかもはるかに良い品質レベルで、アーティストがよりコントロールしやすい形で作ることができました。リファレンスショットから特定のストランドを調整するなど、アートディレクターからの細かなフィードバックメモに対応しなければならない場合でも、Wig なら簡単にオーサリングできます。
『Lion』の制作チームは、北米と西ヨーロッパの複数の国に分散していました。リモートでのチームワークを可能にしたのは、リアルタイムの制作レビューと直感的なイテレーションを可能にする視覚的なコラボレーションツール SyncSketch です。
Wētā Digital の Wig、Ziva、SpeedTree、SyncSketch、Unity エディターの制作検証は、このクリエイティブなエクササイズを通して、リギングから変形、ヘアやファーの取り付けシステム、レンダリングからシェーディングまで、一貫したシステムへのつながりを作り、クリーチャーやキャラクターwoワークフローを迅速に反復し改善させることができました。
「私たちは、各ツールが連携し、クリエイターがキャラクターやクリーチャーをエンドツーエンドでオーサリングするための優れたワークフローを実現することを望んでいます。このデモを作成した目的の 1 つは、制作現場における Unity アートツールの検証を支援し、アーティストが日常的に直面している実際の制作上のニーズを解決し、Unity のツールとワークフロー全体をより良く、より堅牢にすることでした」。Unity Technologies の特別技術研究員兼チーフアーキテクトで、プロフェッショナルアーティストリおよびグラフィックスイノベーション部門担当役員の Natalya Tatarchuk は述べています。
PlayStation 5®、Xbox Series X|S®、PC でリアルタイムに動作する、リアルで本物のように感じられるクリーチャーやシーンのレンダリングを実現するために、数々の重要なイノベーションが生み出されました。
プロジェクトは、Unity の HD レンダーパイプライン(HDRP)から始まりました。今回使ったグローバルイルミネーション(GI)では Adaptive Probe Volumes(APV)を活用して、ライオンを取り巻く乾燥した砂漠と植生を照らすようにしました。
数百万本の毛髪を忠実に再現するグルームのシミュレーションとレンダリングという難題に挑みました。そのために、HDRP の性能とビジュアルの忠実度を大幅に向上させました。
Unity の GitHub で公開された新しい Hair System には、数百万本の髪がリアルタイムで動的に反応する、GPU 駆動のクラスター化ヘアシミュレーションの改善が盛り込まれています。これは、デジタルヒューマンの素晴らしいショーケース『Enemies』で使用されたヘアシミュレーションをベースに、GPU 上で数桁多いヘアストランドを効率的に処理できるようにメソッドを拡張したものです。
ヘアとファーのレンダリングについては、Unity のグラフィック開発者が HDRP の GPU タイルベースのソフトウェア ラスタライゼーションアルゴリズムのために、それぞれ個別の数百万のヘアストランドをレンダリングするための大幅な最適化を含む、一連の改良を設計しました。この方式では、ヘアストランドに計算で並べ替えられたオーダーに依存しない透明度を持つ解析的アンチエイリアスによる滑らかなビジュアルを実現し、物理ベースの高度な髪の照明モデルを改良して映画レベルでのヘアストランドのレンダリングを可能にしました。
この手法により、数百万本の髪の毛が独立して動く様子を、アーティファクトなくレンダリングできるようになりました。子ライオンの毛並みや親ライオンのたてがみなど、柔らかな髪のハイライトや光の当たり方を正確に再現しています。
このようなヘアシミュレーションやレンダリングの改良は、このデモをはじめとする制作を通じて堅牢化されたのち、Unity 2023.1 TECH ストリームに搭載される予定です。
私たちのツールの多くは、すでに世界中の制作現場で使用されています。場所を問わず、さらに多くのクリエイターと共有していくことを楽しみにしています。
『Lion』はバンクーバーコンベンションセンターで開催される SIGGRAPH 2022 の、次のセッションでデモを行う予定です。
Lion: A glimpse of the future with Unity Art Tools
講演者:James Jacobs(Unity Technologies)、Anton Blake 氏(Monster Emporium)、Julio Cesar 氏(Monster Emporium)、Sara Hansen(Unity Technologies)
日時:8 月 10 日(水)午後 2 時 15 分~午後 3 時 15 分(現地時間)
場所:West Building, Ballroom C/D
ぜひご参加いただき、Unity の最新デモ『Lion』のプレミアをご覧ください。この作品は、Ziva、Wētā Digital、SyncSketch、SpeedTree、および Unity エディターのアーティストツールを使って制作されたコンテンツで、リアルタイム技術におけるイノベーションを示すものです。『Lion』を通じて、アーティストが限界を超えたビジュアルを創造するためのプランと、より豊かなクリエイターワークフローのための基盤を紹介します。
Intro to Ziva Face Trainer: Auto-rigging real-time 3D faces
講演者:James Jacobs(Unity Technologies)、Crawford Doran(Unity Technologies)
(SIGGRAPH 2022 終了後、オンラインにて視聴可能)
Creating organic environments in Unity 2021 LTS
講演者:Xiaoxi Liu(Unity Technologies)
(SIGGRAPH 2022 終了後、オンラインにて視聴可能)
Artist-friendly features in HDRP
講演者:Sean Puller(Unity Technologies)、Alix Mitchell(Unity Technologies)
(SIGGRAPH 2022 終了後、オンラインにて視聴可能)
Ziva for feature animation: Simulation and machine learning-ready workflow
講演者:Brian Anderson(Unity Technologies)
日時:8 月 10 日(水)午前 9 時~午後 12 時(現地時間)
場所:West Building, Room 116-117
SpeedTree Cinema: From concept art to VFX asset
講演者:Sarah Scruggs(Unity Technologies)
日時:8 月 10 日(水)午前 10 時 30 分~午前 11 時 30 分(現地時間)
場所:West Building, Room 116-117
Advances in real-time rendering in games: Part III
講演者:Natalya Tatarchuk、Francesco Cifariello Ciardi、Lasse Jon Fuglsang Pedersen、John Parsaie ほか
日時:8 月 11 日(木)午後 2 時 15 分~午後 5 時 15 分(現地時間)
場所:West Building, Ballroom C/D
プローブベースのライティング、ストランドベースのヘアシステム、物理的なヘアシェーディングモデルなどのトピックを取り上げる予定です。
Introduction to Ziva RT: Bringing creature sims into Unity with Monster Emporium and Ziva RT
講演者:James Jacobs(Unity Technologies)、Anton Blake 氏(Monster Emporium)、Julio Cesar 氏(Monster Emporium)
日時:8 月 11 日(木)午後 2 時 15 分~午後 5 時 15 分(現地時間)
場所:West Building, Room 116-117
SIGGRAPH 2022 での Unity 関連セッションの詳細と一覧は、Unity のサイトでご覧になれます。