未来の自動車はどのようなものになるのでしょうか。ドライバーや乗員はどのように自動車と接するのでしょうか。自律走行はどのように実現していくのでしょうか。シリコンバレーにあるフォルクスワーゲン・グループ・オブ・アメリカのイノベーションセンター・カリフォルニア(ICC)では、エンジニア、デザイナー、科学者、フューチャリストなどの職種の人材からなるグループが、このような質問のいくつかに対する答えを提案しています。
ICC はフォルクスワーゲングループイノベーションの世界に 3 つあるリサーチセンターの 1 つであり、ここでは 2030 年以降の世界の姿を予測するという、刺激的かつ挑戦的なミッションが掲げられています。アウディ、ベントレー、ブガッティ、ランボルギーニ、そしてフォルクスワーゲンといった世界的なブランドファミリーを抱える自動車メーカーとして、遠い未来を予測することは顧客のニーズをよりよく予測し、把握することにつながります。
ところで ICC では未来の予測に何を使っているのでしょうか。もちろん、水晶玉を使うわけではありません。使うのは Unity です。ICC には、映画やアニメーション、ソフトウェアエンジニアリング、VR の開発・デザインなど、さまざまな専門性を持つ Unity ユーザーのグループが在籍しており、このグループがソフトウェアの能力を最大限に発揮して、多様な問題を解決しています。
ICC が自ら、これらの分野での活動の舞台裏を紹介してくれています。詳しくは、Unity が ICC と共同で作成したレポートをご覧ください。
ここでは、レポートの内容の一部をご紹介します。
Unity は ICC のビジュアライゼーションパイプラインの重要な構成要素だと語るのは、フロントエンド XR ソフトウェアエンジニアの Alisia Martinez 氏と Andrew Gwinner 氏、それからシニアプロダクトデザイナーの Dij Jayaratna 氏です。「テザー型およびスタンドアロン型の VR ヘッドセット、モバイル AR デバイス、カスタムコントローラー、車内での体験、シネマティックな動画のレンダリングなど、さまざまなプロジェクトの開発に Unity を使いました。」
これらのプロジェクトが対象としている層は、人間工学に照らして自分のデザインを評価しようとするプロダクトデザイナーから、最終的な車のコンセプトを検討する経営陣まで、多岐にわたります。チームは、Pixyz を使ってコンピューター支援設計(CAD)データを Unity に取り込み、アイデア、プロトタイプ、コミュニケーションのためのインタラクティブな体験をさまざまなプラットフォームに向けて開発します。
Martinez 氏、Gwinner 氏、Jayaratna 氏の 3 人は「コンセプトをインタラクティブな体験に変換する作業が最初の 1 回で完璧にうまく行くことはほぼありません」と言います。「デザイナーがリアルタイムで注釈を入れられるようにすることで、他のツールを使うよりもはるかに早く理想的なコンセプトの表現にたどり着くことができます。」
どれくらい速くなるのでしょうか。チームによれば、Unity をベースにしたワークフローでは、従来の手法に比べて半分以下の時間とコストでコンテンツを可視化できるということです。
車内体験のデザインにおいて、Unity のツールは、センターコンソールのスクリーンだけでなく、計器群やヘッドアップディスプレイ(HUD)まで含む未来の自動車のヒューマンマシンインターフェース(HMI)で使われる、よりリッチで没入感のあるコンテンツのデザインに役立っています。
「ゲームエンジンをベースにすることで、より複雑なインタラクションやビジュアライゼーションが可能になりました。」Martinez 氏と UX デザイン・コンセプト担当シニアマネージャーの Loren Skelly 氏はこのように語ります。「コンピューターの画面やテストベンチ上でコンセプトのデザインを行うことは可能ですが、本当の意味でコンセプトを検証しようと思うなら、実際に車を走らせて車内で体験してみることが一番大事です。Unity を使ったツールチェーンを使うことで、それが可能になりました。コンセプトの検証を車内でテストし、ソフトウェアチームに直接フィードバックして、リアルタイムに車の調整を行えるという環境は、ちょっと他では見られないと思います。」
ICC では、機械学習(ML)やコンピュータービジョンを駆使して、顧客が製品を使い込み、時間が経過するとともに改善されていく製品の開発を行っています。こうした ML を搭載した製品の重要な構成要素の 1 つは、構造化され、ラベル付けされたデータです。このようなデータを現実世界で取得するには、時間とコストがかかります。ICC では、この ML のトレーニングデータを取得するためのより安価でスケーラブルな代替手段として合成データを使うようになってきています。
ICC のテクニカルプロジェクトマネージャーである Elnaz Vahedforough 氏は、「多くのパーセプションニューラルネットワークは、ラベル付きデータに依存していますが、これはコストがかかり、エラーが発生しやすいものです」と言います。「合成データを使うなら、一旦ラベリングのタスクを設定してしまえば、ラベリングは基本的に無料で、その他のコストも最小限に抑えることができます。」
ICC では、センサー、知覚、予測、運転などの自律走行コンポーネントを実装するためのニューラルネットワークのトレーニングを行うために、Unity で画像と真の正解となるデータを生成します。
コスト面だけでなく、Unity で生成した合成データを使って、滅多に起こらないシナリオ(事故、道路上に普通は存在しない物体があるケースなど)や、霧や大雨などの過酷な気象条件のシナリオを構築することができます。Vahedforough 氏は、「これにより、エッジケースのシナリオを安全に再現することができます」と述べています。 _______________________________________________________________________________
ICC は、Unity の Integrated Success チームと連携しながら、今後の方向性を模索しています。「Unity ユーザーとしての経験をたくさん積むことで、1 つのことを行う無数の方法があり、その方法の最適化にもまた無数の方法があることが分かりました。」このように Martinez 氏と Skelly 氏は述べています。「Unity の Integrated Success チームは、私たちが作り出そうとしている体験に焦点を当てつつ、理想的な方法を見極める手助けをしてくれ、さらに最高のデザインと実装を実現してくれます。」
ICC が Unity と協力して行った革新的な取り組みについては、こちらのレポートをご覧ください。
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