「スマートシティ」とは、都市環境における活動や変化を記録する Internet of Things(IoT)センサーなどのツールを使って、公共施設、移動パターン、およびインフラの活用や性能に関する価値あるデータを電子的に収集するコミュニティのことです。デジタルツインは、大量の地図データとモデルデータを集約し、リアルタイムに可視化することで作成されます。都市デジタルツインは、大量の地図データとモデルデータを集約し、リアルタイムに可視化することで作成されます。
すでに多くの都市がこの技術のメリットを実感しており、導入が進んでいます。2021 年の ABI Research の記事によると、2025 年までに世界の 500 以上の都市がデジタルツインを導入し、都市計画にデジタルツインを利用することで、2030 年までに世界の都市に 2800 億ドルのコスト削減をもたらすとされています。
これらのモデルを使用することで、政策立案者や自治体は設計やプランニングの決定がコミュニティにどのような影響を与えるかについてより深く理解することができ、急速な気候変動や増大する都市の需要に対応し、将来に向けて都市環境をより良く整備することができるのです。
この記事では、スマートシティの業界をリードする企業が、Unity を活用して都市のデジタルツインを実現している様子をご紹介します。
オーランド経済パートナーシップ(OEP)は、Unity の Accelerate Solutions グループと共同で、経済投資を促進する目的で没入型デジタルツイン体験の制作を行いました。OEP は、過去 5 年間でオーランド地域に 2 万人の新規雇用と 20 億ドルの設備投資を誘致した官民パートナーシップです。
Orlando Regional Digital Twin(オーランド地域のデジタルツイン)は、800 平方マイルに及ぶ地域の地図と、民間および公共のデータセットを重ね合わせ、企業がオーランドの拡張計画について十分な情報を得た上で意思決定できるようにします。OEP は、プレゼンテーションや市内ツアーに頼るのではなく、デジタルツインを利用して、利用可能な土地や不動産だけでなく、さまざまな産業が関心を寄せる地域、インフラの接続性、確保できる人材などを紹介しています。
「このプロジェクトは、私たちのビジネスのあり方、そしてオーランドが提供するすべてのものに企業が接する方法を変えるものです」と OEP の社長兼最高経営責任者(CEO)である Tim Giuliani 氏は述べています。
ノルウェー第 4 の都市トロンハイムは、トロンハイムフィヨルドの海岸に位置しています。997 年にヴァイキング王オーラヴ・トリグヴァソンが築いたこの街は、北欧の豊かな歴史に彩られています。世界中の多くの都市がそうであるように、トロンハイムの地理的特性から、成長を可能にするために既存の都市景観を高密度化することが必要とされています。この実行に際しては、特に街がこれまで長い間維持してきた美しさや魅力を損なわないようにすることが、デザイン上の重要な課題となっています。
2020 年、この地域の建築家たちは「Trondheim 2050」コンペで、自分たちの街の未来像のモデル化に取り組みました。このコンペは今後数十年にわたる市の成長のために、さまざまな視点を取り入れ、プランニングプロセスへの市民参加を高め、包括的な戦略計画を策定するという市の大きな取り組みの一環として行われました。
トロンハイム市のジオデータスペシャリストである Martin Vitsø 氏は、2050 年のトロンハイムの姿をモデル化するため、Unity に注目しました。
「Unity は大きなデータの読み込みを処理することができました」と Vitsø 氏は言いました。「高いレベルの解像度でスクリーンショットを撮ったり、360 度画像を含め、さまざまなプロジェクションを行えるスクリプトをプログラムできるのがとてもよかったです」。
その結果、トロンハイム市の 3D ビジョンは、各チームの提案する建物やインフラの変化を文脈に沿って見ることができる、詳細なデジタルビューとなったのです。このプロジェクトに対するトロンハイム市と市民からの反応は、非常に強いものでした。「3D や VR、インタラクティブな反応マップを市民参加の中に取り入れることができ、市の職員はとても喜んでいました。コミュニティを巻き込んでいく仕事は、全体的に公開のミートアップや印刷された地図に絵を描くといったアナログな作業がそのほとんどを占めていました」と Vitsø 氏は言いました。
「この方法で、より多様な人々がプランニングのプロセスに参加できるようになることを期待しています。都市計画のプランナーからは、従来の情報共有の手段に参加する人の多くは、すでにそのプロセスをよく知っていて、いずれにせよフィードバックを返してくれるだろうと言われています」。
フィンランドに本社を置く Sitowise は、北欧における建造環境の専門家であり、デジタル性に重点を置いています。Sitowise は、土地建物、インフラストラクチャー設計、デジタルソリューションの 3 つの事業分野で事業を展開しています。「スマートシティ企業」として知られる同社のビジョンは、永続性がある持続可能な日常生活の基盤を提供することです。Sitowise は建造環境を視覚化してシミュレートできるリアルタイム 3D デジタルツイン環境を探していました。チームは Unity を使用して社内で設計およびエンジニアリングすることにしました。その結果完成したのが、Sitowise の都市モデリング、データ管理、リアルタイムシミュレーション、インタラクションのためのバーチャル環境 Aura でした。Aura は技術面において、リアルタイムで動的なデジタルツインを構築するための前提条件をすべて満たしています。
フィンランドのオウル港では、港湾インフラストラクチャーのデジタルツインを作成し、それを各種 IoT センサーやデータソースとリンクすることを考えました。港湾の環境下において、デジタルツインは、港湾業務の計画と最適化、セキュリティの管理と監視、利害関係者間のコミュニケーションとコラボレーションのためのプラットフォームを提供することに使用できます。
Unity のリアルタイム 3D 開発プラットフォームをベースに構築されたこの新しいツールを使用して、Sitowise は高い可視性を備えた港湾のデジタルツインを作成することができました。
「オウル港は未来のデジタル化された港湾がどのように運営されるかについて再構想を勧めており、Sitowise は Unity と共にこのビジョンを実現する一翼を担っていることを誇りに思います」と、Moreira 氏は述べています。
ビジュアライゼーションソリューションを提供するフランスの Vectuel 社は、10 年以上かけてパリ広域都市圏を Unity のリアルタイム 3D で再現しました。現在、その巨大なデジタルツインでは、1,000km² の領域内に存在する既存のもの、計画中のもの双方含めて 200 万件以上に及ぶ建造物が再現されています。
市の職員や建築家は Vectuel 社と協働して、建物の設計、審査、建設をより効率的に行っています。都市のインフラのデジタルレプリカを作成することで大規模なビジュアライゼーションが可能となり、建築スタイル、色彩、フロアプラン、機器の配置などの決定プロセスが改善され、判断が迅速に行われるようになります。
Vectuel 社のデジタルツインの中で、ユーザーはパリ広域都市圏の特定のエリアの不動産に触れることができ、広域都市の文脈の中でプロジェクトを解釈することができます。
Vectuel 社の CEO である Grégory Morlet 氏は、「Unity に移行したのは、ウェブを含む複数のデバイスにパブリッシュできるからです」と語りました。「お客様や一般の方がどこからでも簡単にプラットフォームにアクセスできることが必要なので、これは非常に重要なことでした。Unity の製品は、このプロセスを容易にしてくれました」と述べています。
Vectuel 社の統一されたプロジェクトビジョンにより、デジタルツインをさまざまな役割の従業員が使えるようになりました。従業員はどの現場からでもモデルにアクセスできるだけでなく、近隣に建設される予定の建物を事前に見ることができます。Vectuel 社のビジュアライゼーションソリューションは、統一されたビジョンに基づくサービスに誰もがアクセスできるようにするという「all-for-one」の原則を強調しています。
Vectuel 社のモデルの中では現在約 250 のプロジェクトが進行中で、その中には、ヨーロッパ全体で最大の交通プロジェクトであるグラン・パリ・エクスプレスの拡張工事が含まれています。このプロジェクトはまた、2024 年のパリオリンピックをはじめとする、フランスのすべての都市計画プロジェクトにもつながっています。Société du Grand Paris は、Vectuel 社と協力して、パリの主要交通機関の拡張計画を進めています。この計画では、4 つの新しい鉄道路線と、互いに接続された 68 の新しい駅が設置され、パリ市民の通勤時間を大幅に短縮します。
デジタルツインの中で拡張計画を立てることで、エンジニアや建築家は、各鉄道路線や駅が周辺地域にどのような影響を与えるのか、歩行者や車両の交通の流れ、さらには都市部の設計や開発にどのような影響を与えるのかを確認することができます。
Vectuel 社のイノベーション部門ディレクターである Teïlo François 氏はこう付け加えました。「私たちは、パリの人々が開発案に対するフィードバックを行う際に、十分な情報に基づいた意思決定を行い、自分たちの住む地域が将来どのようになるかを知り、コミュニティの成長の一端を担うことができるようにしたいと考えています。Unity がその手助けをしてくれています。」
Vectuel 社によるパリのデジタルツインの詳細はこちらでご覧ください。
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