私たちは、Jonathan van Immerzeel 氏の様式化されたアセットを長い間賞賛してきました。彼が『Lake』の制作で SpeedTree を使用していることを知り、私たちはこの機会に彼のプロセスについて詳しく聞くための機会を作ることにしました。
Jonathan van Immerzeel 氏は Staggart Creations のブランドでも知られており、2016 年から Unity Asset Store でアクティブなパブリッシャーとして活動し、環境および技術アーティストとして『Lake』の開発にも携わりました。
『Lake』は、湖畔の静かな町で郵便局員となり、何気ない日常を体験するナラティブアドベンチャーゲームです。1980 年代のオレゴン州にあるとされる架空の都市「プロビデンス・オークス」を舞台にしています。開発:Gamious 社、パブリッシャー:Whitethorn Games 社。PC、Xbox、Playstation 向けに発売中です。
Jonathan:12 歳くらいの時に、オリジナルの『Unreal Tournament』のステージや MOD を作り始めたのがきっかけで、ゲーム開発に興味を持つようになりました。高校卒業後はその興味を仕事として追求するつもりで、コンピューターサイエンス、プログラミング、ゲームアートやテクノロジーを学びました。2015 年に学士号を取得しながら、2 つのスペシャリゼーションタームの受講を許可されました。これは学習を深めたい題材を選び、その学習プロセスを詳細に説明するというものでした。私にとっては植生アセットの制作はほとんど謎に包まれていたため、これをすぐに題材に選びました。
Jonathan:私が 3D モデリングの世界に足を踏み入れた頃、私は常に『RiME』や『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド™』といったゲームに興味を惹かれていました。これらの作品の抽象的なアートスタイルや色使いは、冒険心や探究心を刺激し、私の心にとても響きました。今でも私は、ノンフォトリアリスティックなゲームアートを自分の目指すものの中核としています。
最近では、Ubisoft のオープンワールドゲームをスケールとワールドビルディングのワークフローという観点で自分のめざす水準としています。植生だけでも、どれだけの研究・開発が必要なのか想像がつきます。
そのうち、資料を通じて自然のことをより深く学び、その場所を実際に見てみたいという気持ちに駆られるようになりました。この活動が、現物から素材を取り込んだり、インスピレーションを得たりするきっかけを大いに与えてくれました。ある意味で、自然の複雑さを観察し、それをビデオゲームの文脈に合わせた形に置き換えていくことが、私の仕事の中心だと言えます。
Jonathan:『Lake』の概念実証の具体化に協力することになったとき、針葉樹が生い茂る環境を舞台にした世界を構築することに、私はとても興味をそそられたのです。この件に関してはかなり自由にやらせてもらいましたし、その自由度と信頼度は私にとっては得がたいものでした。パシフィックノースウエストは多様な植生の宝庫なので、仕事の文脈でアセット収集に取り組めることに興奮を覚えました。これを形にするために、SpeedTree を使うことになるだろうなということはすぐにわかりました。
今にして思えば、『Lake』の植生に携わった期間はとても短いものでしたが、しかし最も楽しい日々だったのではないかと思います。クリエイティブな流れに身を任せ、何かが徐々に成長してその独自の特徴を備えるようになる様子を見るのは特別なことです。私は植物に言いようのない憧れを抱いています。それは、自然界の生命の決意と忍耐の証です。私は、その本当の美しさを伝えたいと願うばかりでした。
Jonathan:『Lake』の舞台となったオレゴン州は、豊かな自然に恵まれています。州内には数多くのエコリージョンが分布していますが、大まかには温帯森林、草原、そして高地砂漠に分けられます。森は木々がぎっしりと密に生い茂った環境で、それが『Lake』のようなゲームに適していたため、この森を主に参考にすることとしました。
連邦政府の林業関係のサイトを回っていると、このちょっと古めかしい林業ガイドに出会いました。このガイドはどんな木がよく生えているのかを把握するのに非常に有効であることが分かったのです。すべての種を詳細にカバーしており、スケール寸法の情報も入っていて、特にゲームアセット制作に役立つものでした。
このガイドを見つけたことで、写真で見た樹木の本当の名前を調べ、アセットリストを作成することは非常に簡単でした。その結果、具体的な参考写真を探すことができました。
あまりに多くの樹種を知ることができたので、『Lake』のアートスタイルに合わせたときに似すぎているような木は省くなど、クリエイティブ上の自由もある程度持って作ることができました。明らかにダグラスファー(ベイマツの樹)が多く(州の約半分を占めている!)、それはゲームの世界にも反映されています。オレゴンにある有名なセコイアの巨木の森など、もっといろいろなものを作りたかったのですが、世界があまり広くないので、樹木園になってしまう恐れがあったのです。
Jonathan:実際の制作ワークフローは、標準的なものとさほど差はありません。最小の要素がまずテクスチャとして作成されます。通常はこれは葉となります。次に枝のテクスチャが作成されます。これは枝のジオメトリを作成するために使用されます。この後にいよいよモデラーで樹木の構築を開始することができます。
最終的に Substance Designer でテクスチャアトラスの色を調整できるよう、枝や葉には原色を使うことが多いですね。こうすることで、素早く調整して、ゲームの世界でその結果を観察することができます。
枝については、力の影響を受けやすく、大きさも一定でないため、ほとんど Frond Generator で作成しました。一方、Leaf Generator は、正しいライティングに不可欠な法線のコントロールに優れています。これを Frond Generator で生成されるメッシュだけでやろうとすると少し難しくなります。頑張ればできないこともないですが...
特に葉の密度は、体積や視覚的なノイズ、影の見え方に影響するため、イテレーションを何度も行う必要があった箇所です。
SpeedTree 8 は、枝のジオメトリをモデラーで作成できるため、基本的にアトラスから葉のかたまりのジオメトリを切り出す手順(ワークフローの冒頭に示した画像の 5 番目の手順)は不要になります。このことと、葉が力の影響を受けるようになったこと、少なくともこの 2 点をもって次のプロジェクトがどんなものであっても、バージョン 7 からアップグレードすべきだと言えます。
従来、樹木のモデルには、幹と葉に別々のマテリアルが使われていました。これにより、幹のジオメトリにアルファテストが不要になるという利点がありますが、技術的には、木を 2 つのステップに分けてレンダリングしなければならないことになります。枝のウェルディング(メッシュ同士を溶接するように結合してポリゴンの数を減らす)はマテリアルが増えるので、常に無効にしていました。
SpeedTree のアセットを Unity にインポートすると、自動的に生成されたマテリアルやテクスチャをすべて削除する後処理のスクリプトが実行されます。こうするとマスクが 2 つ目の UV チャンネルにベイクされます。これは『Lake』の樹木シェーダーで、枝と幹に違いを出すために使われたテクニックです。これにより、樹木に使うマテリアルが 1 つになり、CPU のパフォーマンスが飛躍的に向上させることができます。
樹木は通常、800 ~ 3500 個のトライアングルで構成され、常に少なくとも 2 つの LOD を持っています。合計 170,000 本の樹木があることを考えると、これはかなり健全なトライアングル数の予算でした。
Jonathan:私が植生アセットの制作について学んだ最も貴重なことの 1 つに、成熟度という概念があります。森林の樹木はすべて同じ樹齢ではありませんし、すべての樹木がまったく同じように資源(水、養分、日光)にありつけるわけでもありません。ですから、あらゆる種の樹木について、それぞれのライフステージを表すバリアントが作成されるべきです。これにより、高さや植生の密度に自然な感じの変化が生まれます。植物をランダムに回転・拡大縮小するだけで、同じパターンの繰り返しは非常に見えづらくなります。
枝のかたまりを作成する上で最も難しいことの 1 つは、メッシュ上の物理的なサイズとテクスチャでの大きさのちょうど良いバランスを取ることでしょう。これにより、トライアングル数と知覚される密度の両方が決定されます。私はこれの正確な科学的根拠を示すことはできないのですが、ともあれイテレーションが重要だということはできます。SpeedTree の非破壊的なワークフローでは、スケール、植生の密度、枝や葉の散らし方をいろいろ試すことは、幸いにも簡単で反復的なプロセスであり、忍耐力さえあれば完成させることができます。
Jonathan:パシフィックノースウエストの環境から着想を得た環境パックを作りたいという思いが、だんだん形になってきています。実際に現地に足を運び、現地で資料を集めながら、より精緻なアプローチを模索していきたいと思っています。種を同定したら、次はアセットリストの構築です。
このプロジェクトはこれまでの自分の仕事のどれよりもクールなものになると思いますよ!
今後も Jonathan van Immerzeel 氏の作品にご注目ください。