2022 年は Unity ゲーミングサービス(UGS)にとって大きな年でした。6 月にはベータ版から正式版へ移行、9 月にはセルフサービス型のマルチプレイヤー機能の提供開始と、この 12 か月で多くのことが起こりました。
UGS の初期リリースでは、バックエンドインフラ、プレイヤーエンゲージメント、ゲームの発展・普及、および収益化など、開発者が直面する共通の課題点に焦点を当てていました。しかし、それはほんの始まりに過ぎませんでした。
この半年間で、開発者のリソースの最適化、ワークフローの統合、ユーザーを惹きつける体験、成功のための新しいツールなど、新機能や新製品を発表してきました。
このページでは、サービスのローンチ以来リリースしてきた製品の概要と、UGS の今後の展開についてご紹介します。
ゲーム開発はリソースを大量に消費するため、実際のゲームプレイや体験の開発にいかに時間とリソースを振り向けるかが重要です。
2022 年には、顧客の開発リソースを最適化し、専門的な開発スキルセットが必須となる場面を減らし、ソフトウェア、サービス、インフラのコストを削減するためのツールや機能のアップデートを開始しました。
2022 年 9 月、Unity のマルチプレイヤーサービススイートにセルフサービス機能が追加され、Game Server Hosting(Multiplay) や Matchmaker などの AAA レベルのツールを、場所に関わらず、あらゆる規模のスタジオに提供できるようになりました。特別なネットワークやホスティングの経験は必要ありません。
Game Server Hosting(Multiplay)のアップデートには、ゲームサーバーとその依存関係をすべてイメージとしてパッケージ化し、エンジンからアップロードできるコンテナーが追加されました。レジストリにプッシュするだけで、あとは Unity がやってくれます。また、Unity Dashboard を介したセルフサービス機能は、サービスの統合にまつわる悩みどころを回避できるよう、ガイド付きのオンボーディング体験を提供しています。
マルチプレイヤーゲームが専用ゲームサーバー(DGS)ではなく、P2P モデルを使用する際、協力型マルチプレイヤータイトルのホスティングを行う手頃なオプションとなる Unity Relay も 2022 年 6 月にリリースしています。Relay は、皆さんのゲームのニーズに合わせてシンプルかつ自動的にスケーリングし、通信は Datagram Transport Layer Security(DTLS)により安全に保たれます。
開発者やスタジオにはそれぞれ、ゲーム開発に好んで使う技術スタックがあります。UGS は顧客がすでに使用しているツール、ワークフロー、データソースと統合できるように設計されています。
UGS は最近、Bring Your Own Identity(BYOID)で、認証における重要な統合オプションの提供を行いました。ID システムが OpenID に準拠していれば、そのシステムを UGS Authentication に統合して、ゲームサービス全体にプレイヤーをリンクさせることができます。このソリューションは、自社で構築したカスタム ID システムだけでなく、Firebase、Cognito、Epic Account Services などの一般的な ID ソリューションにも対応しています。また、Meta Quest(Oculus)、Apple Game Center のサインインにも対応しました。
皆さんのマルチプレイヤータイトルを、あらゆるデバイスで動くクロスプラットフォームなゲームにするため、2022 年に Unity のマルチプレイヤーソリューションで Unity WebGL をサポートしました。コンソールとモバイルなど、あらゆるデバイス・あらゆるプラットフォームをまたいで、ブラウザークライアントをピアホストすることも可能になりました。この面白い新機能を触ってみたい方は、Unity エディター 2022.2 以降で、Relay(1.0.5 以降)、UTP(2.0.0-pre3 以降)、および NGO(1.2.0)をチェックしてください。
もし Mirror を使って Unity でマルチプレイヤーでのネットワーキング機能を実装されているなら、良いお知らせがあります。Unity は 10 月に、Unity Transport Package(UTP)と Relay を Mirror Networking API と組み合わせて使う方法のデモ「Unity Mirror Sample」をリリースしています。
また、皆さんの開発ワークフローを改善するために、2022 年には Cloud Code がベータ版から正式版に移行しました。Cloud Code では、ゲームの新しいバージョンをリリースすることなく、クラウド上でリアルタイムにゲームコードの変更を行うことができます。また、Economy や Authentication など他の UGS バックエンドサービスと統合して、ユーザー体験を全体的に向上させることができます。
Unity をお使いの場合は、エンジンと UGS の統合が強化され、ワークフローが改善されます。Remote Config と Cloud Code のためのアップデートされたオーサリングツールによって Unity エディターとのスムーズな統合が可能になり、エディターを離れて別のウィンドウを管理する必要性を下げつつ、エディターから直接アセットをデプロイできるようになります。
より魅力的なゲーム体験を提供していただけるよう、2022 年には、ゲームによりプレイヤーを惹きつけるフィーチャーを追加するプロセスの簡素化にも注力しました。
ゲーム内チャットを可能にすることは、マルチプレイヤーゲームにおけるエンゲージメントやコミュニティ形成を促進するための優れた方法です。
コミュニケーション関連での大きなリリースとしては、ボイスチャット・テキストチャット(Vivox)を使ったモバイル向けマルチプレイヤーの新機能による、最適化されたボイスチャットおよびテキストチャット機能の追加が挙げられます。
モバイルデバイス上の音声を、PC、Mac、コンソールとデバイスをまたいで再生することが可能で、Unity、Unreal、その他の C++ ゲームエンジンとの相性も抜群です。これらのボイスチャット・テキストチャット(Vivox)のアップデートについては、7 月のブログ記事をご覧ください。
また、マルチプレイヤータイトルでは、プレイヤーが実際にゲームセッションを見つける際の接続方法についても考慮する必要があります。2022 年に 2 つの製品をリリースし、マルチプレイヤーゲームに 2 種類の接続方法を提供するようになりました。すなわち、セルフサービス型の Matchmaker と Lobby です。
Matchmaker は 2022 年 9 月に追加された、AAA での使用実績もある、セルフサービス機能を備えたスマートなマッチメイキングツールです。主な機能は以下の通りです。
皆さんのゲームのプレイヤーにマッチメイキングのパワーを届けるために、プレイヤー主導のマッチメイキングを Lobby システムで実現しました。Lobby は 6 月に正式版となり、プレイヤーは公開ロビーまたはプライベートロビーを作成することができます。クイックジョイン機能によって、すぐにゲームに参加する事もできます。
また、プレイヤーにゲームを繰り返し遊んでもらうために、モバイル向けプッシュ通知のベータ版の提供を開始しました。プッシュ通知は、ゲームイベントと連動して使用され、特別なイベントや季節のイベントに関するエキサイティングな最新情報をプレイヤーに共有したり、一定期間ゲームに現れていないプレイヤーに再度遊んでもらうために使用することができます。
ゲーム業界の競争が激化する中、プレイヤーを飽きさせない工夫が以前にも増して重要になってきています。UGS のダッシュボードにある解析ツールを使えば、人々がどのようにゲームをプレイしているかを理解し、その情報に基づいてゲームを適応させられるようになります。
7 月には、Unity Analytics がベータ版から正式版となり、より魅力的なユーザー体験を構築するための深いデータのインサイトを得ることができるようになりました。
Funnel と Unity Analytics のレポートツールを併用することで、ステージの難易度やメニューの設定など、プロジェクトに加えるべき変更をピンポイントで把握することができます。Cloud Content Delivery(CCD)と Economy Overrides を使用すると、CCD アセットと Economy リソースに的を絞って、スケジュールされた変更を実施することができます。
Game Overrides には昨年も、検索の仕組みやフィルター、Override のカスタムの優先順位に至るまで、数多くのアップデートが入りました。これにより、ライブサービスゲームに季節ごとのイベントやゲーム内ショップの新しいコンテンツを追加するなどの変更を加え、離脱率を下げ、ゲームへの愛着心が高いプレイヤーに長い間遊んでもらえるようになります。
LiveOps ツールのもう 1 つのアップデートは、カレンダーという形で提供されました。次の月、次の四半期、あるいは次の年のスケジュールを明確にすることで、イベントや通知を適切な場所でまとめて受け取れるようにできます。
Unity はただ製品やツールをリリースすることに注力しているわけではありません。実際にゲーム環境で製品やツールがどのように動作するかを確認することは、開発者の皆さんがプロジェクトを進めるうえで何を必要としているかを理解するために重要なことです。そのため、2022 年には UGS が提供する機能をすぐに理解していただけるよう、多彩なゲームサンプルを新しくリリースし、既存のゲームサンプルについても更新版のリリースを行いました。
Unity は Photon 社と提携し、ハイスピードなバトルロイヤルゲームの開発手法を理解していただくために、Unity で作ったバトルロイヤルゲームのサンプル『BR200』を開発しました。Unity ゲームエンジン、Game Server Hosting(Multiplay)、Matchmaker を使って、大規模マルチプレイヤーゲームの最新のフィーチャーとゲームモードの作例を見せるサンプルです。予測やラグ補正といった Photon Fusion の強力な機能を使い、CPU やコンピューターの処理能力の消費を抑えつつ、複雑なマルチプレイヤーゲームを構築することができます。
このサンプルには以下のようなフィーチャーが搭載されています。
2022 年 8 月には、最大 4 人のプレイヤーと協力して、宇宙空間を進む敵を倒す 2D マルチプレイヤーゲームのサンプル『Galactic Kittens』をリリースしました。
『Galactic Kittens』は、基本のネットワークマネージャーの設定を使って、簡単に localhost 上でテストができます。このサンプルは、スプライトアニメーション、パーティクルエフェクト、基本的な 2D の動きを適用して同期させる方法を学べるように設計されています。
『Boss Room』は Netcode for GameObjects で作られた小規模 3D 協力型ゲームのサンプルプロジェクトです。2022 年にアップデートされ、UGS の Relay、Lobby、Authentication を活用した実装になりました。これらのバックエンドソリューションを組み合わせることで、協力型ゲームを開発するための強固な基盤が提供されます。開発者は『Boss Room』のアップデートされたコードを読み込んで、自分で類似のゲームタイトルを作るための先取りをすることができます。
このサンプルゲームは、さまざまな UGS ツールを本制作環境で使っていることを特長としています。ですので、マルチプレイヤーゲーム開発について学び、キャラクターのアビリティの実装、キャスティングアニメーションの使用による遅延の隠蔽、オブジェクトの複製、リモートプロシージャコール(RPC)の活用などについて調べることが可能です。
2022 年には、2D コレクタブルカードゲームに Authentication、Cloud Save、Cloud Code、Economy、Remote Config を使ったサンプルも公開されました。今年も外部へのリリースのための作業の進行に合わせて情報を発信していきますので、ご期待ください。