モバイルゲームの収益とリテンションの目標を達成するためには、ゲームプレイ中の重要な瞬間にプレイヤーに価値を提供する広告実施戦略が重要です。
Unity ゲーミングレポート 2022(日本語版はこちら)によると、ゲームに広告を含めると、ゲームを遊んだ 1 日後(D1)は 26%、7 日後(D7)は 8%、30 日後(D30)は 3% に、それぞれプレイヤーのリテンション率が向上することが分かっています。
広告をゲームデザインにシームレスに組み込むことで、ゲームプレイの進行を助け、プレイヤーにより良い体験を提供することができます。その上収益も得られるので、ゲームに再投資することができ、オーディエンスを惹きつけ、より長い間またプレイしたいと思ってもらえるような、魅力的な体験を作り出すことができます。
この記事では、ゲーム内広告の設計の中核となる要素について理解し、Pixel United 社と協力して、同社の人気サンドボックス型モバイルゲーム『EverMerge』(パブリッシャーは Pixel United 社のフラッグシップ事業である Big Fish Games)の収益化戦略を強化した方法を紹介します。
Unity では、収益化の効果を最大限に引き出すために、インパクトのある広告体験を構築するための 4 つの重要なステップがあると考えています。これらのステップを踏むことで、戦略においてプレイヤーを一番に考えた収益化が可能になります。
収益化を始める前に収益化の目標を設定することで、より戦略的に戦術を考えることができ、ゲームとプレイヤーに付加価値を与えることができます。
Pixel United 社がゲームを開発する過程で、Unity はシームレスなプレイヤー体験を提供するために、プレイヤーが広告に接触する重要なポイントを特定しました。
ゲームの進行を邪魔するのではなく、プレイヤーにとって付加価値のあるポジティブな広告体験を優先したのです。私たちは、広告の目的を 3 つに絞りました。
3 つの広告目標を確認したら、ゲームループのどこに広告を配置するのが最適であるかに焦点を当てます。このブログで紹介するゲームデザインでよく使われるゲームループには、「コア」と「セカンダリ」の 2 つがあります。各ループは、プレイヤーのゲームの進行に応じた広告をシームレスに実装する機会を提供します。
ゲームの目的によって、広告ユニットの実装は異なります。インタースティシャル広告を、ユーザーの自然なゲームプレイの流れを中断させ、ユーザーを離脱させるような場所に設置することは、どうしても避けたいところです。例えば、ラウンドやターンの終わりは、ゲームにとって自然な区切りであるため、そこにインタースティシャル広告を配置することを検討するとよいでしょう。
動画リワード広告は、リテンション率目標の達成を助ける良い方法です。ステージクリアに失敗した時にこれらの広告を表示し、パワーアップアイテムを解放するなど、ゲームに参加し続けるためのオプションを提示します。
Pixel United 社のコアとセカンダリのループは、「アクション」「報酬とパワーアップ」「拡張」の 3 つのフェーズで構成されています。『EverMerge』にシームレスに広告を組み込む最適のポイントは以下の通りでした。
この 3 つのフェーズと広告がどこにフィットするかを考えることで、プレイヤーはゲームをプレイし続け、新しいコンテンツを解放し、クエストを進めていくことができるのです。
ゲームループの中で、広告を表示する適切な機会やプレイヤーがそれに接する適切なポイントを特定したら、次は目標を達成するための戦術を選びます。適切なタイミングで適切な広告フォーマットを使うことでプレイヤーに取ってほしい行動をしてもらうように促し、皆さんの目標達成につなげることができます。
ゲームの収益化の方法は、インタースティシャル広告、動画リワード広告、アプリ内課金(IAP)の 3 つが一般的です。それぞれの広告フォーマットで達成できる目的は異なります。
インタースティシャル広告は画面全体を覆うものが普通ですので、ゲームの中で自然と手が止まるポイントで表示するのが最適です。インタースティシャル広告をステージの終わりとメインメニューの間の移行に使用すると、自然な感じで流れを壊さないので、リテンションを損なわずにユーザーベースをより効率的に収益化することができます。
動画リワード広告は画面全体を覆い、スキップできないように設定されているのが普通です。ただし、オプトイン方式なので、プレイヤーは自ら動画リワード広告を視聴して報酬を受け取ることを選択しています。これは、プレイヤーが価値のあるアイテムやゲーム内通貨などの報酬を自然に期待しているときに最適な方法です。プレイヤーは短い広告を見ることに同意し、その見返りとして何か欲しいものを手に入れます。価値のピースをはまる場所に置くのは、皆さんの仕事です。
『EverMerge』で、プレイヤーが広告に接するポイントに動画リワード広告を実装した事例として、アイテムの上に紫色の再生アイコンを浮かべたものがあります。アイコンをクリックするとプレイヤーに 3 つの動画が提示され、それを見ることで木のフレームや、クエストを早くクリアできるようになるルビーなど、貴重なアイテムを受け取ることができます。
IAP を使うと、コアループを進行するためのアイテムを手に入れるために、プレイヤーに現実のお金を使うように促すことができます。こうした課金は、ゲーム通貨、特定のアイテム、ゲームのヒントなどを購入するために使われます。広告を表示する代わりに、プレイヤーにお金を払ってもらってゲームの体験を向上させ、収益を上げることができます。
『EverMerge』では、プレイヤーは特定の金額を支払うことで、動画リワード広告を見ることなくレベルをクリアするのに役立つルビーを手に入れることができます。
ストアフロントにおいては、動画リワード広告はプレイヤーに IAP の真の価値を理解してもらい、今後の購入を促すためのリスクの低い入口となり得ます。
ゲームループ内で広告を表示する適切なポイントを特定し、プレイヤーの体験を補完する広告フォーマットを実装したら、主要な指標を使用して広告のパフォーマンスを正しく理解することが重要です。
指標としては、CPM(1000 インプレッションあたりの費用)、IMPDAU(デイリーアクティブユーザー 1 人あたりのインプレッション数)、ARPDAU(デイリーアクティブユーザー 1 人あたりの平均収益額)などがあります。これらの指標は、パフォーマンスを追跡し、思い込みではなく、データに基づいて戦略を最適化するのに役立ちます。
最初から完璧な収益化戦略はありません。プレイヤーを惹きつけ続け、ゲームに残ってもらうには、改善の機会を探すことが必要です。
『EverMerge』でも、いくつか最適化するべき領域が見いだされました。1 つ目は、プレイヤーがステージをクリアした後に動画リワード広告を表示し、ゲームプレイ中でステージをクリアして嬉しい瞬間にさらに報酬が得られるようにすることでした。レベルアップやステージクリアなど、ゲームが進むポイントに動画リワード広告を配置することで、ゲーム進行ループを終えたプレイヤーへの報酬をさらに大きなものにします。
スタジオはすでに、ゲームプレイの自然な合間に広告を表示させるという素晴らしい仕事をしていたのです。しかし、CTA(コールトゥアクション)のパフォーマンスがさらに最適化しうる部分の 1 つとして浮かび上がりました。
以下の画像でわかるように、動画リワード広告の CTA の色を変えて、プレイヤーの目に飛び込むようにすることを提案しました。プレイヤーにとって広告の体験を明確でわかりやすいものにすることで、よりシンプルにプレイヤーの意思で広告を見てもらえるようになります。CTA の最適化は、広告のパフォーマンスを向上させることができるのに、開発リソースは最小限で済みます。
私たちは一般的に、プレイヤーがゲームループを進めることをシームレスにサポートするコンテクスチュアル広告を提供することで、より多くの価値を生み出せるよう広告を調整することを推奨しています。これらの広告は、ユーザーの特定のコンテンツの嗜好や興味に基づき、ターゲットを絞って表示されます。
報酬付き動画を使ったコンテクスチュアル広告は、ゲームを遊び始めた早い段階でプレイヤーに素早く勝利をもたらすことができます。『EverMerge』の場合、プレイヤーには追加のゲーム内通貨とパワーアップアイテムが提供され、ゲームを継続的に遊んでもらいやすいようになっています。ゲームを続けるために必要なアイテムがない場合、プレイヤーはゲームをやめてしまうでしょう。
透明性、コントロール、インサイトをより高いレベルで提供するツールは、ゲームとプレイヤーベースに合わせた収益化戦略を構築するのに役立ちます。
Pixel United 社のケーススタディでは、セルフサービスの広告ブロックや、Unity の Monetize ダッシュボードの収益インサイトなどのツールを使用して、ユーザーへの対応やブロック行為の影響の把握に役立てている事例を紹介しています。