巨大な(そして成長し続けている)市場を考えると、モバイル向けの開発はエキサイティングな機会です。しかし、それはゲームを作るということだけではありません。強いビジネスを構築し、運営することでもあります。
急速に拡大するモバイルゲーム市場において、インディ開発者はどのように試練を乗り越え、どのように機会をとらえているのでしょうか。
Robot Squid 社のクリエイティブディレクター兼共同設立者の Chris Dawson 氏、アートディレクターの Paul Ellinor 氏、シニアプログラマーの Jason Hobbs 氏、および Superplus Games 社の CEO、Kalle Jyly 氏と共に、『King of Crabs』と『Hills of Steel 2』におけるモバイルゲーム開発体験の舞台裏に迫りました。
この Q&A セッションでは、モバイルでのローンチを選択した理由や、ゲームのリリースを成功させるための実践的なアドバイスが紹介されています。
インディ開発者として、モバイルプラットフォームでの展開を選択した理由は何でしょうか。
Chris Dawson 氏:私たちがモバイルをターゲットにしている理由は、何よりもまず、過去 15 年間の私たちの専門知識とバックグラウンドがすべてそこにあるからだと思います。15 年前はチームがとても小さく、ゲームを市場に出すのも大変で、コンソールでは勝負になりませんでした。私たちはモバイルに移行し、そこに大きな利点を見出しました。特に、iPhone と App Store のリリースでモバイルが爆発的に普及したタイミングで、これまでよりはるかに簡単に、ゲームを単独で市場に投入できるようになりました。
私たちがモバイル向けにゲームのリリースを続けている理由は、膨大な数のユーザーベースがあり、世界的に人気の市場であること、市場へのアクセスが容易なこと、そしてインディー開発者には新しいコンテンツを見たいモバイル向けストアからの素晴らしいサポートがあることです。
近年、ハイパーカジュアルゲームの登場、マーケティング戦略の必要性、ユーザー獲得にかける費用の増加などにより、ユーザーの注目を集めることが難しくなっています。しかし、小さな会社が突破口を開くことについては、この市場にはまだまだ大きな可能性があります。
Kalle Jyly 氏:私は 2004 年からモバイルゲームを作っているので、私の知識のほとんどはその分野のものです。PC やコンソール向けのゲームも手がけたことがあり、それらは良い経験でしたが、同時にゲームスタジオを立ち上げ、それらのタイトルの出荷を開始することはより困難なことでした。モバイルの方がアクセスしやすかったので、私たちには最初からそちらのほうがより理にかなっていたのです。PC やコンソールで発売することの利点は理解できますが、本気で焦点を絞り、どこにエネルギーを配分するかを選んで戦うことが本当に重要です。そして私たちの場合は、選んだ場所がモバイルだったのです。
モバイル向けにゲームをデザインする際、どのようなビジョンを持っていましたか。
Kalle:他のゲームや競合他社と真っ向からぶつからないように、独自のプレイヤー体験を作ることを心がけました。それは、プレイヤーの視点からも、マーケティング的な面からも、あまりいいこととは言えないでしょう。また、どのような機能が有効で、どのような機能がそうでないのか、市場戦略情報を用いて直感的に理解することもしました。
私たちにとってゲームのコンセプトを考えるのは簡単なことですが、そのアイデアを実際のゲームにするのは非常に難しいことです。ゲームのアイデアがすごく良くても、平凡なゲーム開発を行えば、ゲームも平凡になってしまうと言われています。しかし、ゲームのアイデアは平凡でも、ゲーム開発が優れていれば、キラリと光るゲームができるでしょう。
プロトタイピングのプロセスはどのようなものだったのでしょうか。
Chris:最初のプロトタイプは、2D 平面上に円で表された 2 つの円柱があるだけのもので、それらが接触するとお互いにダメージを与えるというものでした。動かしてみると、実際の手触りが分かり、操作感やゲームプレイの方向性が見えてきました。その後、Unity Asset Store からプレースホルダーとして使うアートワークをいくつか入手し、ビジュアルの方向性を示し、最初のフィードバックを得ました。その後、さらに 2 〜 3 か月かけてイテレーションを行い、バランスを取りながら、自信を持てる段階までたどり着きました。
私は、できるだけ多くの人に見せて、フィードバックを得ることが大切だと信じています。Unity を使えば本当に素早くプロトタイプを作成することができ、これは理想的でした。しかし、時間もリソースも限られた小さな会社としては、ある時点で今作っているものは正しく、市場に入り込む隙間はあると腹落ちさせ、制作にまい進していくタイミングを迎える必要があります。
モバイル展開を考慮した場合、開発のアプローチはどのように変わりましたか。
Jason Hobbs 氏:モバイルゲーム開発ではイテレーションがやりやすかったです。サーバー駆動型のゲームなので、多くのロジックはサーバーにあり、クライアントにはありません。サーバーで変更し、再起動するだけで、プレイヤーのスマートフォンに変更が反映されるようになっています。わざわざ新しいデバイスのビルドを作る必要はないのです。サーバーの立ち上げには時間がかかりましたが、そこからは実際のイテレーションやデザインはかなり早くなりました。
モバイル向けのゲームの開発において、技術的な課題は何でしたか。
Paul Ellinor 氏:ハイエンドデバイスでゲームが美しく見えるようにしたかったのですが、ミッドレンジやローエンドデバイスのユーザーベースが私たちのプレイヤーのかなりの部分を占めているため、そちらへの対応を怠るわけにはいかず、苦労しました。できるだけ多くのデバイスに対応したい、そのためにはグラフィックの複雑さを落とす必要がある。今思えば、そのための計画が足りなかったのです。私たちは予定に間に合わせることに注力していましたが、ハイエンドとローエンドの両方の戦略を立てて、より綿密に計画を立てていれば、特定のデバイスに合わせたゲームを作ることができたかもしれません。
モバイル向けにゲームをリリースする際の一番のコツは何でしょうか。
Chris:他のゲームがたくさんリリースされている中で、自分のゲームを注目してもらうのは本当に難しいことです。発売前、そしてソフトローンチ時には、多くのリサーチを行い、スクリーンショットやアイコン、トレイラーなどのクリエイティブを細かく調整することをお勧めします。Unity の Cinemachine は、アプリストア向けのトレイラーを制作する際に非常に役立ちました。
これらの最適化により、App Store と Google Play のアルゴリズムが、ユーザー獲得に多額の費用をかけなくても、オーガニックで十分にダウンロード数を獲得できるくらいに、ユーザーに対してゲームを露出させることができます。小さなスタジオでは、一般的に広告予算は限られており、大きなスタジオと競争するのは厳しいです。
Kalle:プレイヤーのフィードバックを得るために、できるだけ早い段階で、良いソフトローンチを行うための計画を立てることをおすすめします。良い指標を立てられれば、あとが簡単になります。厄介なのは、実際に 1 週間、あるいはそれ以上の期間、毎日ゲームに戻ってきてもらうためにはどうしたらいいかということです。ユーザーのロイヤリティを得て、長く遊んでもらうことは本当に難しいです。そしてゲームも本当に良いものでなければなりません。
私たちが一番大切にしているのは、最低でも月に 1 回はアップデートを行い、何年も続くゲームを作るよう努めることです。これにより、プレイヤーは一貫性のある、ダイナミックな体験を期待することができます。
指標が良ければ、ゲームのマーケティングや配信もしやすくなります。パブリッシャーと仕事をしていない小さなスタジオには、少ない広告予算で始めてみるようにアドバイスしています。Unity Ads で 1 日 20 ドルかけてみて、どれだけのインストールがあり、どれだけの収益が入ってくるかを観察してみてください。学ぶための一番の方法は、やってみることです。挑戦することを恐れてはいけません。
モバイル向けにゲームをリリースするインディ開発者にとって重要なことは、ユーザー体験を重視すること、自分たちにとって最も良い開発・最適化手法を見つけること、早くから頻繁にテストを行うこと、それから、アプリストアの最適化が大切であることを忘れないことです。
もっと知りたい方は、新しい e ブックを読み、モバイル市場で成功するためのベストプラクティスを学びましょう。また、Made with Unity フォーラムで、他のユーザーと成功の秘訣を共有していただければ幸いです。