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『Deadhaus Sonata』でナラティブへの新しいアプローチを定義する Apocalypse Studios

2022年4月22日 カテゴリ: ゲーム | 14 分 で読めます
Deadhaus Sonata characters in a compilation
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Eternal Darkness』のクリエイターが、次回作の ARPG でクラウドの未来を取り入れ、シングルプレイヤーゲームのストーリーテリングをマルチプレイヤーゲームに持ち込むというミッションに取り組んでいます。

ベテランのゲーム開発者である Denis Dyack 氏は、『Eternal Darkness: Sanity's Requiem』、『The Legacy of Kain: Soul Reaver』、『Metal Gear Solid: The Twin Snakes』など、ダークでストーリー重視のシングルプレイヤー向けタイトルを手がけたスタジオ、Silicon Knights 社の設立者として知られています。2018 年、Dyack 氏は COO の Paul Rogozinski 氏(元 Silicon Knights 社、Digital Extremes 社)、CPO の Ryan Pacheco 氏(元 Big Viking Games 社)とともに Apocalypse Studios 社を設立し、CEO に就任しました。

AAA スタジオで長年活躍したのちにインディーズに転身した彼らは、Apocalypse 社を「クラウド上のスタジオ」と表現しています。主にリモートワークで、社内の開発ツールやプロセスから、ナラティブやゲームプレイの制作まで、すべてにおいてクラウドファーストのアプローチを取っています。

このたび同社は、近日発売予定のデビュー作に Unity を採用することを発表しました。同社は HD レンダーパイプライン(HDRP)を活用して、プレイヤーにまったく新しい体験を約束する予定です。同社初のプロジェクトとなる『Deadhaus Sonata』は、プレイヤーがアンデッドのクリーチャーに扮する、基本プレイ無料のチームベース ARPG です。生者との血みどろの戦いを演じる吸血鬼、バンシー、リッチ、グールが登場します。

giant bat

Apocalypse 社の物語はコミュニティから始まる

Deadhaus Sonata』で、Apocalypse 社は、ライブサービス型のマルチプレイヤーというジャンルに、シングルプレイヤーのストーリーテリングを持ち込みたいと考えています。Steven Erikson 氏の『Malazan Book of the Fallen』シリーズや作家 Thomas Ligotti 氏のホラー作品から着想を得て、このゲームのグリムダークファンタジーの伝承は、大部分がプレイヤー主導で行われます。これは、Apocalypse 社の『Deadhaus Sonata』の「クラウドベースのメタゲーム」というビジョンと合致しています。

「ゲームもシングルプレイヤーからマルチプレイヤーに移行し、ナラティブが重視されなくなりました」と Dyack 氏は言います。「現代においてゲームをデザインするときは、ゲームの中のコンテンツだけでなく、ソーシャルメディアやストリーミングなど、ゲームの外のことも考えなければなりません」。

これらのチャンネルから発信されるコミュニティ主導のコンテンツは、Apocalypse 社にとって『Deadhaus Sonata』の骨子にさらに肉付けしていく動機付けとなっています。アーリーアクセスのプレイヤーはすでに吸血鬼の話を書き、YouTube のラジオ番組にそれを使っています。Apocalypse 社は、『Deadhaus Sonata』に自分の足跡を残したいプレイヤーに向けて、マップ、スキン、クエストを配布して収益化できるプレイヤー主導の経済をサポートするという壮大な計画も描いています。

「この業界には『メタバース』のような新しい言葉に異常に興奮して、そしてつまづく傾向がありますが、これはゲーマーにとってフラストレーションになりえます」と Dyack 氏は説明します。「常にプレイヤーに立ち返ることが大切です。『Deadhaus Sonata』のビジョンは、ゲーム内のものだけでなく、プレイヤーの興味を引き、世界に没頭させるために使用できるゲーム外のものもすべて含んでいます」。

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大規模インタラクティブライブイベント(MILEs)を専門とする Genvid 社とのパートナーシップにより、Apocalypse 社は、クラウドを利用したライブ放送イベントを企画し、視聴者をより惹きつけ、ストリームコンテンツと直接対話できるようにしたいと考えています。Genvid 社の MILE SDK を使用し、『Deadhaus Sonata』、視聴者がゲーム内のストーリーやイベントをストリーマー向けに操作し、最終的に共有体験を形成することができる深いソーシャルメディア統合を特徴としています。これは、没入感を深め、コミュニティを成長させる役割を担っています。

「スマートフォンでストリームを見ているときに、リンクをクリックしてそのストリームにコードを挿入することができます」と Dyack 氏は指摘します。「その後、ゲームをインストールする必要がなく、リアルタイムでゲームをプレイし、交流することができるようになります」。

意欲的な成長を支えるツールの選択

Deadhaus Sonata』はまだ開発の初期段階にあり、「the First Age」と名付けたパブリックアルファは 2022 年後半に公開される予定です。Apocalypse 社は適切なツールを見つけるのは仕事を始める前が最も簡単であることを知っていたので、早めに実験を行うことにし、ゲーム制作に使うさまざまなエンジンや開発ソフトウェアをテストしました。チームは Lumberyard と Open3D の両方を試しましたが、基本的には Unity が最も確立されたツールセットであり、迅速なスケーリングに役立つと判断しました。

Apocalypse 社のチームは、HDRP を使用して短期間で達成できたことに、特に感銘を受けています。「最初にやったことは、HDRP のデモに飛び込んで、どんな作業をするのかを確認することでした。ちょっといじってみたら、1 時間後にはもうすごい結果になっていました」と Dyack 氏は言います。

Deadhaus Sonata』のムーディーでゴシックな世界にプレイヤーを没入させるには、ゲームプレイに反応するビジュアルエフェクトが重要です。「リアルタイムライトと複数のデンシティボリュームを備えたボリューメトリックフォグによって、雰囲気とトーンを驚くほど簡単に生み出すことができました」と Apocalypse 社のテクニカルディレクター、Yuriy Toporovskyy 氏は明かします。「ゲームトリガーに基づいて外観をカスタマイズする Volumes フレームワークにより、複雑なゲームプレイのインタラクションシナリオを非常に迅速に提示することができます」。

サブサーフェススキャッタリング、歪み、屈折、マルチレイヤーマテリアル、オクルージョンマッピング、半透明、バックライトなど、HDRP に組み込まれた高度なマテリアル機能を使って、シーン全体の AAA 品質のマテリアルをわずか数日で作成することができました。「『Deadhaus Sonata』では、AAA タイトル級のビジュアルを実現できると確信しています」と Rogozinski 氏は断言します。「HDRP の実力を見せつけられるということで、みんな興奮しています」。

プレアルファ版の映像

Unity について理解を深める

Apocalypse 社は、Unity クリエイターの協力的な性格と、Unity を使う開発者を支援するための豊富なリソースを賞賛しています。「インディーシーンをサポートするコンテンツやハウツー動画、ガイドを作成する素晴らしいクリエイターがたくさんいることが気に入っています」とPacheco 氏は言います。「これに私たちは元気づけられ、非常に素早くチームの生産性を高めることができました」。

Apocalypse 社は、Unity Asset Store もうまく活用して、スピードアップを図っています。「YouTube に大学があるみたいです!」と Dyack 氏は言います。「私たちのチームで『こんなものが必要だ』ということになると、私はまずアセットストアを見るんです。非常にコストパフォーマンスが高く、迅速なプロトタイピングに非常に有効です」。

たとえば、Pacheco 氏は Volumetric Blood Fluids パッケージを使って、Mortal Kombat』で使われている、Houdini で作られたゴア表現の特殊効果に似た効果を実現し、大幅なコスト削減を達成しました。「外注すれば、数千ドルのコストと 6 か月の時間が必要だったでしょう。アセットストアを使って、30 ドル払って 1 時間以内にゲームに取り込むことができました」。

より高速なワークフローを選択する

Apocalypse 社は、制作物の管理とスピードアップを図るため、扱うファイルが巨大なバイナリファイルでも対応できるバージョン管理システム(VCS)を求めました。当初は Git ベースのバージョン管理で、初期段階のプロジェクトファイルには十分対応できましたが、技術者でないチームメンバーには使いにくいという問題がありました。その後、Rogozinski 氏が Digital Extremes 社で愛用していた VCS である Perforce に乗り換え、最終的に同僚の勧めで Unity Plastic SCM を試してみることになりました。

「Perforce は素晴らしいツールですが、小さなスタジオである私たちには大きな出費となりました」と Rogozinski 氏は説明します。「Plastic は 10 分の 1 程度のコストで、しかも最初から Unity に統合されています。これに切り替えるのは、当然のことでした」。

screenshot of Plastic SCM

「使いやすく、Perforce よりも圧倒的に速いです」と Dyack 氏は付け加えます。「以前は、ビルドを落としてくるのに 2、3 分かかっていました。もっと時間がかかっていたのです」。

Apocalypse 社がゲームデータを Perforce から Plastic に移行するのに 1 日もかからず、しかも同社は Plastic のチームから開発工程全体を通して、サポートを受けることができました。システムが稼働し始めると、以前 Perforce の導入を行った Rogozinski 氏は、Plastic を導入することで作業効率が格段に向上したことに衝撃を受けたと言います。「最初はタスクによるブランチングにとても抵抗があったんです。1 週間とか 2 週間のあいだ、ブランチを離れて仕事をしてもらうのは嫌だったんです。なぜなら、ブランチをマージしようとしたときに何が起きるか分からないからです」。

「私は完全に間違っていました!」と Rogozinski 氏は認めます。「とてもいい具合に動作するし、また統合は非常に簡単で、非常に速いです。Plastic のマージツールは Perforce に匹敵します」。

Plastic SCM は柔軟な「タスクベースのブランチング」ワークフローを推奨しており、チームがサブブランチに分かれて作業しても、データの損失や無駄な作業を気にすることなく、便利に変更をマージすることができます。メインブランチからすべてを切り離すことで、開発者はサブブランチで作業したいものを選び、必要であれば何日もメインブランチから離れることができるのです。

「壊すことを恐れなくていいんです」と Pacheco 氏は言う。「本番プッシュする前にメインブランチを自分のブランチに取り込むことができるので、金曜日の 5 時にビルドを壊すようなコンテンツをプッシュする心配はありません」。

「まったく違う方法論で、とても気に入っています」と Rogozinski 氏は断言します。

A battle scene from Deadhaus Sonata

犠牲を払わずスケールする

Apocalypse Studios 社は、『Deadhaus Sonata』に対して大胆なビジョンを持っています。そのために、同社はチームとしてスケールできるような適切なツール群を厳選し、初日からコミュニティの構築に力を注いできました。

企業からインディー開発者に転身した彼らは、創造性と革新性の精神を失うことなくスケールする方法について、いくつかのアドバイスをしています。「私からのアドバイスは、一緒に働く素晴らしい仲間を見つけ、その関係を育むことです」と Pacheco 氏は語ります。「その仲間とのつながりを維持し、その仲間との仕事を続けるために必要なことをするのです。コミュニケーションを第一にするべきです」。

Pacheco 氏のコメントに付け加える形で、Rogozinski 氏は「Apocalypse 社は、コミュニティのキュレーションを重視しています。頻繁に交流し、プレイヤーの意見に耳を傾けることで、健全なプレイヤーベースを築きたいと考えています。プレイヤーがコンテンツに協力し、デザインに意見を出してくれることは、非常に貴重です」。

最後に Dyack 氏は、Silicon Knights 社での経験を振り返り、次のように語ります。「大規模スタジオでは、仕事に集中するあまり、トレンドやツール、異なる働き方など、チャンスを逃してしまうことがよくあります。周りを見渡して、新しいものを知りましょう。そうしたことで、私たちは、これ以上ないほど幸せになりました」。

Deadhaus Sonata』は現在、Steam のウィッシュリストに登録できる状態です。Unity Plastic SCM についてご興味を持たれた方は、Michela Rimensberger 氏のインタビュー記事をご覧ください。Sycoforge 社が Unity のバージョン管理を利用して、同社から近日発売予定の RPG『Return to Nangrim』で、ユニークな開発プロセスを実現していることを説明しています。

2022年4月22日 カテゴリ: ゲーム | 14 分 で読めます

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