パートナーや顧客、そして Unity のエディターやランタイムを日々使っている方々と話すと、いつも出てくるのがもっと野心的なゲームデザインをしたいという要望です。制作における制約を少なくし、プレイヤーを驚かせ、ワクワクさせる体験を届けられるツールを求めているのです。
Unity 2022 LTS は、そのようなパワーを提供できるように設計されています。新しい LTS リリースを使えば、DOTS を使った野心的なゲーム、マルチプレイヤー体験、没入感のある HD 環境、そしてどんなターゲットプラットフォームでも素晴らしいパフォーマンスで動くビジュアルを制作できることがお分かりいただけると思います。また、今回のリリースでも、あらゆるデバイスに向けた素晴らしいツールによって、幅広いプラットフォームへのサポートを提供することに取り組みました。
そういうこともあり、目前に迫った Unity 2022 LTS のリリースについて皆さんにお知らせすることをこれ以上待ってはいられませんでした。
2023 年 6 月 22 日には、私たちのお気に入りの機能を紹介する数時間のライブストリームを開催しますので、ぜひご登録の上、ご参加ください。ですが、私のように新機能の発表を固唾をのんで待っている皆さんに向けて、この記事ではとっておきの情報をお伝えします。
それでは、今回のリリースで私が特に期待しているハイライトをご紹介しましょう。
ついに DOTS が登場します!Laurent Gibert と Jor Valenzuela が率いるチームが、初めて本番環境での使用をサポートするバージョンの Entity Component System(ECS)を完成させてくれました。これで、皆さんに完全な Data-Oriented Technology Stack(DOTS)ソリューション、すなわち、Burst コンパイラー、C# Job System、そして今回 ECS for Unity が加わることで完成したソリューションを使って、開発を行っていただけるようになりました。
非常に困難なプロジェクトに取り組むには、パワーと柔軟性を提供するゲームエンジンが必要です。ECS for Unity は、メモリ上のデータをより強力に制御し、決定論的に扱えるようにすることで、より優れたランタイムでのプロセススケジューリングを実現する機能を提供します。ECS はエディターに統合されているため、既存の GameObject ベースの体験を活用しつつ、ここぞという場面で Entity ベースのコードを使うことができます。
DOTS のパワーの活用法は Unity 2022 LTS のリリース時にさらに詳しくお伝えしますが、こちらのフォーラムで積極的に参加しているチームと交流することができます。
Unity 2022 LTS では、急速に発展を遂げている制作ワークフローやクラウドサービスのエンドツーエンドのエコシステムをもって、マルチプレイヤーゲームをサポートできることを嬉しく思っています。これは、Unity ゲームエンジンと Unity Gaming Services(UGS)を通じて提供されるマルチプレイヤーサービスとの緊密な統合によって実現されています。
Unity 2022 LTS に Netcode for Entities パッケージを同梱し、本番制作を完全なサポートできる形でリリースします。Netcode for Entities は、ゲームのパフォーマンスと機能を高めるための強力なネットワーク機能です。FPS や多人数参加型オンラインゲームなどの対戦型アクションゲームにおいて、プレイヤー、インタラクティブなオブジェクト、バックエンドのサーバーサイドエンティティの数を増やすことができるようになります。
他のどのジャンルよりも、マルチプレイヤーゲームは、ライブタイトルのための良質かつ継続的なオペレーションに依存しています。そのため、UGS の一部として、マルチプレイヤーに特化したサービス群を用意しています。Matchmaker、Friends、Leaderboards、User-Generated Content は、マルチプレイヤー機能の実装を簡素化するように設計されており、Relay、Lobby、Game Server Hosting(Multiplay)、Voice and Text Chat(Vivox)などのサービスは、ライブゲームの機能を強化するためのものです。
当社のマルチプレイヤー機能が実際に動いているところを見てみたい方は、新しい Megacity マルチプレイヤーサンプルをご覧ください。このデモは、ECS for Unity を基礎に開発され、ホスティング、マッチメイキング、認証、およびプレイヤー間のボイスチャットのための UGS ツールを使っています。このデモは、64 人以上のプレイヤーをサポートする、ハイスピードな対戦型三人称視点シューティングゲームにおいて、当社の強力なツールをどのように使うことができるかを示しています。
HD レンダーパイプライン(HDRP)を使って、物理ベースの美しい環境にプレイヤーを没入させましょう。Unity 2022 LTS には、ゲーム世界を強化するための多数の機能が含まれており、プレイヤーにこれまでにない豊かな体験を提供できます。Unity 2022 LTS には、ゲーム世界を強化するための多数の機能が含まれており、プレイヤーにこれまでにない豊かな体験を提供できます。
ボリューメトリックマテリアルやシェーダーグラフを使った高度なプロシージャルフォグやボリューメトリックエフェクトを導入し、お化けの森や荒涼とした風景、霧の谷など、雰囲気のあるゲーム環境を作り出しましょう。
新しい Water System により、ゲーム環境に海や川、水中のエフェクトを追加することができます。リアルな波、波紋、あぶくなどを作成できるほか、高度なコースティクス、屈折、反射のエフェクトで水中環境のシミュレーションを行うことも可能です。
動的ライティングとボリューメトリッククラウドを備えた Cloud Layer の改良により、天候に 応じて変化・移動する雲を置き、晴天・曇天などさまざまな天候のエフェクトをブレンドするだけで、よりリアルな空の表現が可能です。
Spline パッケージに新たに入ったアップデートにより、環境内のパス、道路、フェンスをより高い精度でプロシージャルに生成することができるようになりました。手作業を減らしつつ、より有機的で多様なゲーム環境を実現できます。
ユニバーサルレンダーパイプライン(URP)は、プラットフォームに関係なく高品質なグラフィックスを実現するスケーラブルなソリューションを提供します。今回のリリースにおけるアップグレードにより、シーン内でよりリアルなライティングを作り出し、デバイスを超えてスケールする高品質なビジュアルを実現することができます。
Forward+ レンダリングでは、ライトの制限数が撤廃されるので、パフォーマンスを維持しながらシーンでより多くのライトを使用することができます。この機能は、シーンで高品質のリアルタイムライティングを実現したい場合に特に有効です。
LOD クロスフェードは、オブジェクトがカメラに近づいたり離れたりする際に、よりスムーズなグラフィックの切り替わりを実現します。Temporal Anti-aliasing(TAA)は、エッジのピクセレートやちらつきなどエイリアシングにまつわる問題を軽減し、ゲームシーンの全体的なビジュアル品質を向上させます。
Decal Layer を使えば、テクスチャを使ってさらにシーンのディテールを強化し、しかもコントロールすることができます。Decal Layer で、シーン内の異なるオブジェクトが異なる Decal Projectors の影響を受けるようにフィルタリングや設定を行うのです。
シェーダーグラフの Full Screen Master Node や、カスタムのスクリーン空間エフェクトなどの機能により、レンダリング体験をカスタマイズできます。これらの機能を使って、ゲームで歪みやその他のポストプロセッシングによるユニークな視覚エフェクトを作り出すことができます。URP と HDRP の両方で利用可能です。
Shader Variant Prefiltering は、ビルド時間・メモリの最適化を大幅に強化し、ビルド時間の短縮とゲーム全体のパフォーマンスの向上を実現します。
最後に、Built-in Converter です。これは既存のプロジェクトをビルトインレンダーパイプラインから URP に移行する支援を行うもので、これを使えば URP のパフォーマンスとスケーラビリティの利点を活用できる環境により簡単に移行することができます。
Unity 2022 LTS では、モバイル、コンソール、デスクトップ、XR の最新プラットフォーム向けにゲームを最適化し、主要機能のパフォーマンスと安定性を追加することができます。
Windows と Xbox の DirectX 12 グラフィックス API を使用して、パフォーマンスと安定性を向上させ、プラットフォームの可能性を最大限に引き出します。また、Xbox® Series X|S と PlayStation®5 で最新のレイトレーシングをサポートし、ゲームシーンでより真に迫ったリアルタイムのライティングと反射を使うことができます。
Xbox®、iOS、PlayStation®5、Nintendo Switch™ 向けの最新のインクリメンタルなプレイヤービルドプロセスを使えば、より速くイテレーションを回し、デプロイの効率を高め、市場投入までの時間を短縮し、ゲーム全体の品質を向上させることができます。
ARM の System Metrics Mali パッケージを通じて低レベルのデータにアクセスすることで、Android ゲームのパフォーマンスをより深く掘り下げることができます。Samsung 製デバイスのゲームでは、ビジュアルスクリプティングをサポートする Adaptive Performance 4.0 を利用できるようになりました。モバイル機器向けの Webビルドでは、WebGL のメモリ使用量をより適切に管理し、ネイティブの C++ マルチスレッド、タッチ操作のサポート、テクスチャ圧縮を利用できるようになりました。
Unity 2022 LTS では、PlayStation®VR2 および Meta Quest 2 のビルド時間を短縮するために XR Interaction ツールキット(XRI)を更新し、XR でのリーチ拡大につなげようとしています。 レイトラッチングとモーションベクトル、および Vulkan を使うゲームの改善されたグラフィックスパフォーマンスを活用して、皆さんの VR ゲームがパフォーマンスの高いさまざまなデバイスでうまく動作するようにしましょう。これらのアップデートされたツールにより、複数のプラットフォームにデプロイできる、没入感があって現実のように思える XR 体験を構築できます。
最低 2 年の開発とテストの間、Unity 2022 LTS はユーザーからのフィードバックとユーザーテストに大いに依存してきました。ベータ版や TECH ストリームリリースを通じて、多くの方が私たちの長い開発の過程に参加してくださいました。2022 年サイクルで最も安定した Unity リリースを提供するために私たちと協力してくださったことに、個人的に感謝したいと思います。そして、LTS リリースは隔週で行われるアップデートによって少なくとも 2 年間はサポートされることも忘れないでください。
Unity 2022 LTS と Unity 2023.1 TECH ストリームリリースについて詳しくご紹介した、GDC 2023 のロードマップセッションをぜひご覧ください。
Unity 2022 LTS は、皆さんが制作プロセスのどの段階にあっても、皆さんのプロジェクトが完成を迎え、さらにその先へと導くためのリソースを提供します。e メールアドレスをご登録いただき、Unity 2022 LTS のリリース日にお知らせを受け取れるようにしておいてください。
Unity 2022 LTS の概要についてご紹介しましたが、このリリースで利用できる強力な機能とツールについてご理解いただけたなら幸いです。私たちはいつでも、皆さんのフィードバック、質問、アイデアをお聞きしたいと思っています。ぜひ今後とも私たちとの対話を続けてくださいますよう、よろしくお願いいたします。
フォーラムで他の Unity クリエイターや専門家と交流することもできますし、プラットフォームのロードマップを通じてなら私たちと直接交流することもできます。Twitch でライブストリームを視聴したり、Twitter で私たちをフォローして最新のニュースやアナウンスをチェックしてください。皆さんのご意見をお待ちしています。
*Nintendo Switch は任天堂の商標です。