長年 Unity を利用しているクリエイターの方はご存知かと思いますが、私たちは定期的にアップデートや機能改善、ヒントやベストプラクティスについて、ブログ、フォーラム、イベントなど複数のチャンネルを通じて発信しています。この複数のチャンネルを通じたオープンな対話は、私たちのコミュニティのルーツの核をなす部分です。
しかし、時には自分の専門分野や興味のある分野に関して、現在使えるものを一覧できる情報源があると嬉しいものです。Unity の新しい e ブック「Unity for Technical Artists: Key toolsets and workflows」 は、経験豊富なテクニカルアーティストにとって、そうした情報源となることを目指したものです。オリジナルの e ブックは Unity 2020 LTS ベースでしたが、今回の最新版で Unity 2021 LTS で利用できるようになった機能を反映したものになっています。
この e ブックは、経験豊富なテクニカルアーティストに向けて、Unity のすべてのシステム、機能、ワークフローを詳細にまとめたガイドとしては初のものになります。インスピレーションの源として、また、より高度なクリエイターコンテンツにアクセスするための参考として活用し、スキルセットの充実を図ってください。
「Unity for Technical Artist」では、コンパクトながらビジュアル豊かな各セクションを通じて、Unity で実現できるグラフィックの品質とスタイルの幅についての大きな可能性を紹介します。
しかし、インスピレーションを与えるだけがここでの目的ではありません。各セクションには、教育向けのより詳細なリソースへのリンクがあり、皆さんや皆さんの仕事、キャリアパスにとって非常に重要なツールセットの使い方を学ぶことができます。
これまで私たちが関わってきた個人クリエイターやプロフェッショナルチームからのフィードバックによれば、テクニカルアーティストには、使っているデジタルコンテンツ制作(DCC)ツールやゲームエンジンを使って、さまざまなターゲットプラットフォームで実現可能なことを幅広く理解していることが求められています。それを踏まえて、アートディレクターや他のアーティストに、対象となるハードウェアの制約や可能性を伝えていきます。
多くのテクニカルアーティストは、キャラクターのリギングからシェーダーの作成まで、チームの中でももっとも複雑なアートにまつわるニーズに対応し、またプロセスを加速させる新しいワークフローや作成ツールを提案しています。また概して、ゲームやその他のアプリケーションのビジュアル品質が、チームが設定した一連の基準に達しているかどうかを確認する重要な役割を担っています。
「Unity for technical artists」の内容が多くのツールセット、パイプライン、ワークフローにまたがっていることは、テクニカルアーティストに求められる専門性の幅広さを反映しています。
この e ブックは、Unity のスキルを伸ばしたいユーザーにとって有益なリソースとなります。グラフィックスのプログラミングに特化したいプログラマー、Unity でインタラクティブな要素のためのスクリプトを書いてゲームコンテンツを洗練させたいデザイナー、スクリプティングやシェーダーグラフによるシェーダー作成を学びたいアーティストなど、さまざまな方がいらっしゃると思います。
この e ブックは、以前に Unity を少しだけ使用したことがある人や、またはまったく別のエンジンを使用したことがある人など、新しいチームメンバーのオンボーディングにも便利です。このガイドは、クリエイティブな作業に役立つ Unity ツールや関連する学習リソースを見つけ出す役にも立つでしょう。
それでは、e ブックの主な項目をご紹介します。
アセットに関する章では、非破壊的なアセットパイプラインの構築、アセットのインポート、DCC ツールによるラウンドトリップ、アセットデータベースなどのトピックを取り上げています。
このガイドでは、ユニバーサルレンダーパイプライン(URP)とHD レンダーパイプライン(HDRP)の最新機能をレビューし、皆さんのプロジェクトにとって最適なレンダリングパスを選択するためのポイントを説明します。その他、動的解像度やアップスケーリング手法なども取り上げています。
さらに、プログレッシブ、CPU、および GPU の各種ライトマッパーでグローバルイルミネーション(GI)のシミュレーションを行うためのライティングワークフローや、リアルタイム GI、レイトレース GI、Enlighten の違いも解説します。
Unity は、リッチでスケーラブルな 3D・2D の世界の構築とデザインを行うための完全なツールセットを提供しています。これらの章では、ProBuilder と Polybrush でステージのグレーボクシングを行うための重要なワークフローについて掘り下げ、地形スカルプティングのための最新ツールを紹介し、URP と HDRP で空、雲、霧のビジュアルを作成する方法について詳しく説明します。
ビジュアルスクリプティングには視覚的に理解できるノードベースのグラフが備わっており、プログラマーでなくてもこの機能を使って最終的なロジックを設計したり、短時間でプロトタイプを作成したりできます。Unity のビジュアルスクリプティングシステムの紹介では、これまでのようにコードを書くことをせずに、Unity プロジェクトのゲームロジックを定義する方法を説明します。
付録では、Unity のデモ『The Heretic』と『Enemies』で使われたデジタルヒューマンの制作過程を概説しています。データの取り込みから肌・目・髪のビジュアルを作り出すための処理まで、デジタルヒューマンで使われるエフェクトがどのように生み出されたかをお見せしています。
アニメーションシステム、カットシーンやシネマティクスの作成、2D ツールセットなど、e ブックを読めば、この記事で紹介したもの以外にも多くの物事を発見することができます。