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バーチャルリアリティにおけるナラティブデザイン:Unity による VRDC 講演の紹介

2017年3月1日 カテゴリ: コミュニティ | 5 分 で読めます
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VRDC 2017 で行った「Narrative Design in Virtual Reality」というプレゼンテーションで、Unity は VR 業界に課題を提示しました。その課題とは、より良いナラティブの作成です。

VR においては、ストーリー(何が起こるか)とナラティブ(起こる事をどう表現するか)の違いが非常に重要です。VR という媒体においては、小説の言葉や舞台役者の台詞、あるいは RPG ゲームのインタラクティブ環境のみならず、オーディエンスが見て、触れて、聴いて、選択するものすべてが完全に「ストーリーの伝え手」によって設計されるものだからです。「ストーリーの受け手」がどこかに注目する可能性に備え、すべての場所に関してストーリーを用意しておく必要があります。

2016 年に VR 関連のニュースを少しでもご覧になった方なら、エコシステム中のあらゆる分野の人々が、より充実したコンテンツ、より長いコンテンツ、何度も遊べるコンテンツを熱望していることをご存知でしょう。しかし本当の問題はプレイ時間の長短なのでしょうか?それとも私たちが、よりレベルの高い、複雑性のあるストーリーを伝えようとしていないことが問題なのでしょうか?

本記事では、このプレゼンテーションを見逃された方のために、パネリスト達の伝えた内容を要約してご紹介します。

Unity の VR/AR エバンジェリストである Sarah Stumbo は、自己啓発の分野で有名な「関与がなければ葛藤は存在しえない」という文言引き合いに出し、これは(人間関係のゴタゴタを避けるために役立つアドバイスというだけでなく)VR 開発者にとっても「ストーリーには葛藤が不可欠であるため、VR 体験には関与が不可欠である」ことを再確認できる最高の言葉であると述べました。私たちはユーザーの関与の形をどのように進化させられるのでしょうか?オブジェクトを動かしたり、イベントを目撃するほかは何もできないのでしょうか?それとも、それ以上の何かが可能なのでしょうか?ユーザーが自己主体感(sense of agency/運動の動作主体が自分であるという感覚)を感じなければ、私達は彼らに「選択を行って自分の運命をコントロールする力」を与えることができません。主体性が持てなければユーザーは椅子に座って平らな画面を見ているだけで十分でしょう。また、葛藤がなければ、彼らはコントローラーを手に辺りを見渡して「これで合っているのかな?」と言うでしょう。葛藤と自己主体感が合わさって初めて、インタラクティブなストーリーテリングが実現されます。ゆえに、ユーザーに目的意識と、自らの運命を切り開く術を与えることが大切です。VR は新しい関与の形を提供します ― そんな素晴らしい可能性を活かさない手はありません。

次に、Unity Labs の主任デザイナーである Timoni West は、目的に応じたサウンドデザインの力に関して、私達の理解が一歩深まる説明をしました。アンビソニックスが使用される VR においては、音楽・台詞・エフェクトなどの全てが含まれる「サウンド」も、ことさらに重要となる要素のひとつです。ストーリーを進行させるために、特定の箇所にサウンドを配置することで、ユーザーの注意をアクションの方に向ける(あるいは反らす)ように導くこともできます。このサウンドは、重要な情報を含む領域に視野を合わせてもらうためのユーザーへの「合図」です。言い換えればサウンドは、開発者の新しい編集室とも言えます。

『The Blacksmith』(2015)および『Adam』(2016)を制作した Unity デモチームのプロデューサーである Silvia Rasheva は、環境ストーリーテリングが VR クリエイターに与える計り知れない可能性について語りました。雰囲気、世界観の構築、キャラクターに関するヒント、ミザンセーヌ(演出)などの全てを含めた、ユーザーのゲーム開始時の環境が、ナラティブの第一歩 ―「私はどこにいる?」「私は何故ここにいる?」「今のところ何が分かっている?」― となります。環境ストーリーテリングの形は、時と共に進化して来ました。昔は、人々は焚火の周りに座ってストーリーを語っていました ― それが紙に書かれた言葉となり、そして舞台で語られるようになりました。さらに映画、そしてゲームによるインタラクティブな語りとなり、環境を活用したストーリーテリングの手段は有り余るほどになりました。そして今、VR によって、さらに新しい可能性が加わったのです。この媒体によってもたらされた新しいツールとは一体何でしょうか?そのひとつは、環境が初めて実物大になったことです(一本の木が、本当の木と同じ大きさになったのです!)。また、360 度の環境が実現されたほか、触覚の利用(足に雪の中を歩いているような感覚を与えるブーツなど)なども可能となっています。Silvia は「結局のところ、環境は舞台として考えなければならない。つまり、ストーリーを語るような物を配置し、ユーザーが向けた注意に応えを用意していくことである」と述べました。VR 体験においては、ユーザーが最終目的地(クライマックス)に到達するまでに、例えば 14 のステージがあるかもしれません。しかし、映画から学んだ成功法則のうちの一部は、手放してしまっても問題ないでしょう ― 例えば「すべてを完全にコントロールしなければならない」など。

プレゼンテーションの最後には Isabelle Riva が刺激的な言葉を投げかけました ― 技術的な制約や強化についてはすべて忘れるべきであると。クリエイターとして自分にしか伝えられないことは何か?どんなストーリーを語りたいか?Made with Unity のリーダーである Isabelle と彼女のチームは、Unity で制作された特に素晴らしいコンテンツの発掘やサポート、フィーチャーを担当しています。私達ひとりひとりの創造のプロセスは異なりますが、それぞれのストーリーがいつ、どこから生まれたとしても、ビジョンが明確であればあるほど、開発の苦労は少なくなります。どんな結果を目指しているのかがはっきり分かっていれば、VR 体験の作り直しをしなくて済むのです。ですから、信念を持ってください。Frank Capra は言っています ―「映画製作にはルールはないが、罪はある。そして最大の罪とは退屈である」と。

昨日のプレゼンテーションのもうひとつの目玉は、VR クリエイターの皆様による、これらのテクニックを実際に使用した素晴らしいコンテンツの数々でした。『Asteroids』(Baobab Studios)から『The Price of Freedom』(Construct Studio)、『Life of Us』(Within)まで、すでに VR におけるナラティブの限界を押し拡げている素晴らしい才能は、皆に大きな刺激を与えました。

VRDC プレゼンテーションにご参加くださった熱意溢れる皆様に感謝いたします。今回参加を逃された方も、5 月の Vision Summit で行われるナラティブ関連の講演を楽しみにお待ちください!来年も VR ストーリーテリングにとって革新的なワクワクする一年になるでしょう。皆様の創造の成果を拝見できるのを楽しみにしています!(※訳注:イベントは好評のうちに終了しました。)

2017年3月1日 カテゴリ: コミュニティ | 5 分 で読めます

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